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TopTextOWL’s foolish seriesOWL&Nori松本失笑珍道中> 往路篇

〜第一部 往路篇〜

 

Fri,16 2002 Nov. 21:45 三重県津市 OWL下宿

 

バイトから帰って一息ついているOWLの携帯電話が鳴り出す。Noriからである。

Nori「もしもし、OWL?もう、こっちは準備OKなんだけど、そっちはどう?もうそろそろ迎えに行っていい?」

そう、この日はNoriの家に乗り込む日である。何しろ普段から奇行の限りを尽くしているNoriである。もう、友人として付き合い始めて2年になるが、その生態の大部分は未だに謎に包まれている

こやつは一体、どの様な家庭に生まれ、どの様な家で育ち、どの様な人生を歩んできたのか。彼奴の脳味噌らしきものから創造されるこの世の常識を激しく逸脱した考えは、どの様な経験を通して構築されてきたのか。興味は尽きない。今回のNoriのお宅拝見ツアーは、そのNoriの未知の部分を少しでも解明しようとする為に企画したといっても過言ではない。

そのため、Noriの帰省時期を見計らって半ば強制的に同行を志願したOWLであるが、何を隠そうこの時OWLはまだ支度が完全に出来ていなかったのである。自分から無理に誘っておいて、しかもNoriに車まで出してもらいながら何てヤツだOWLは。

という訳で、Noriの出発を10分ほど遅らせてもらったOWL。

OWLの旅路はいつでも前途多難で始まるのは、多分OWLが悪いと思う。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 22:01 三重県津市 OWL下宿

 

自分から頼んでおきながら出発時刻をおくらせやがったふてえ野郎OWLの下宿にNoriの車が到着した。OWL、恥ずかしながら車に関する知識が皆無に等しいのでNoriの車の名前もうろ覚えなのだが、確かダンクだかスカンクだかいう名前の車であったと記憶している。

予めNoriに「松本は死ぬほど寒いから厚着して来い。」と言われていたので、勇んでこのまま八甲田山へ雪中行進しに行っても1時間くらいは余裕で耐えれそうなくらいの重装備にしてきたOWL。だが、そのコーディネートは、Noriの車に乗って1分もしないうちにOWLへの災難に変化しようとは、当時は思いもしなかった。

何しろNoriの車、暖房がガンガンに効いていたのである。どうやら寒いのは苦手らしい。松本に住んでいるのに(あまり関係ないが)。

これは困った。何しろOWL、熱いのも暑いのも苦手である。よって暖房も苦手である。でも何故かコタツは好きである。

そのため、Noriの車の居心地は、意外に綺麗な車内にも関わらずイマイチであったが、そんな事を車に乗って1分足らずで言っては走行中に車外に叩き出されそうだったので言うのを止めた。

前途多難に前途多難を更に重ね、OWLとNoriを乗せた車は遠く松本に向かって走り出した。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 22:10 三重県津市 某ガソリンスタンド

 

松本への道のりは余りにも遠い。そのため、津市内のガソリンスタンドで給油とオイル交換、ついでに洗車もすることと相成った。

洗車中に、ガソリンスタンドで休憩するOWLとNori。Noriは、これからの道のりなんかを一生懸命説明してくれるのだが、OWLはこの日バイト前に買ったファミ通を読むのに夢中。

更には、一生懸命これからのルートについて説明するNoriにOWLが逆にファミ通に載っているゲームの説明返し人生殺(や)られる前に殺(や)れ。

互いに説明のぶつかり合い。しかも互いに相手の説明を聞いていない。

こんなアホな事をしているうちに洗車も終わり、結局OWLは目的地の松本以外、何処に寄るのかサッパリ分からないまま珍道中を続ける事となったのである。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 22:32 三重県安芸郡芸濃町 芸濃インターチェンジ

 

車のメンテナンスも終わり、OWLとNoriは芸濃インターから伊勢自動車道に進入。

だがOWL、実は一抹の不安があった。いや、本当は二抹も三抹も四抹も不安があった。

OWLが車が苦手であるという事は、当サイトの駄文を隅から隅まで読んでいる奇特な方ならば分かっていただけるであろうが、これまではまだスピードが低かったから良かった。

高速道路となるとそうはいかない。

何しろ高速道路とは、スピードが低い方が帰って危険と言う実に奇異な空間である。その高速道路の特性がOWLに牙をむいて襲い掛かる。

何だか大げさな事を書いているが、要するにOWLはスピードが上がると落ち着かなくなってしまうのである。

ああーだんだんスピードが上がってゆくー。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 22:38 三重県安芸郡芸濃町 関ジャンクション

 

高速で走る車が苦手なOWL。何しろ免許を取ったときも、なかなか50キロ以上出せず、スピードを落とすように言われまくった友人知人たちを尻目に、教官に最後まで「もっとスピードを出せ。」と言われ続けた奇跡の運転ヘタレOWLである。

それが今回は時速100キロ近く。しかも助手席。更にこの辺りは事故が多いところという事もあってOWLの焦りは頂点に達していた。

こうなるともう冷や汗が止まらない。Noriには平常を装っていたものの、多少の段差で車がボコーンと音を立てる度にびくついていたほどのヘタレ加減であった。

冷や汗が出れば肌の弱いOWLは汗疹が大量に出来る。この時既にOWLは、暖房の暑さと相まって肘の内側辺りが汗だく。汗疹も出来ていたようで何処と無く痒い。

多少の振動でびくつきつつ肘を掻くOWL。ビクッ。ボリボリ。ビクッ。ボリボリ。

傍から見れば明らかにおかしな動きをしつつ、2人を乗せた車は東名阪自動車道へと進入した。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 22:55 三重県鈴鹿郡関町 東名阪自動車道

 

刀鍛冶とは全く関係の無い(そりゃ岐阜県関市だ)関町に合法侵入。先ほどの関JCTは関とか名乗っているクセして関町に存在しない。千葉の東京ディズニーランドの様なものだ。まあ、どっちだって大して変わらないが

この辺りからOWLのスピード感覚が麻痺し始め、80キロならば平気になってしまった。これが噂に聞くドライバーズハイなのか、とも思ったが多分違う。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 23:14 三重県四日市市 東名阪自動車道御在所サービスエリア

 

幾ら3日徹夜とか1日13時間労働とか死にかけながらやってのけるNoriだとしても、三重県津市から長野県松本市までぶっ続けで運転する事は危険を伴うだろう。そもそも、事故でも起こされたらOWLにまで被害が及ぶ(←ここ重要)。そのため、このサービスエリアで休憩を取ることと相成った。

ついでにこれから先、いつ何時UFO(宇宙人付)とか幻の珍獣とかちょっとエッチな女幽霊とか地方の妖怪とか、面白いものに出くわすか分からないので、使い捨てカメラを購入しようと企んだOWL。早速売店へと足を向かわせた。

しかし、売店のレジにいるべき店員さんがいない。まさか。例え夜中でもサービスエリアは営業している筈だ。Noriにも頼み込んで店員を探すOWL。

5分ほど探したが、やはり見付からない。おかしい。食堂には人がいるのに。

途方に暮れているOWLの視界に、怪しく眼を輝かせながらある一点を指差すNoriの姿が。その指の先には「従業員専用通路。関係者以外の立ち入りはご遠慮ください。」と書かれた看板が付けられた扉が鎮座していた。

すると次の瞬間、まるでその看板が全く眼に入っていないのかと思えるくらい何のためらいも無く戸を開け始めるNori。すごい。流石、深夜の大学にコッソリ忍び込もうとして警報機を鳴らし、次の日大学の掲示板に「不審者が出ました。注意してください。」と書かれただけの事はある。不法侵入やらせたら右に出るものはいない。

Noriの後ろからそっと戸の中を覗いて見たOWL。すると突然後ろから声が聞こえた。

「何かお買い物ですか?」

振り向くと、店員らしき格好をしたおじ様が怪訝そうに覗き込んでいた。OWLはつい、

OWL「ちちちちち違うんです。ここここコイツが勝手に忍び込もうと……ぼぼぼぼぼぼぼぼぼ僕は無関係です。コイツとは無関係です。何もしてません。やってません。」

と言おうとしてしまうのを必死で堪え、素直にカメラが買いたいと言う事を伝えると、店員さんに怪訝そうな表情が消え、無事にカメラを買うに至った。

だが、扉を開け始めた時のNoriの薄笑み浮かべた表情と言い、店員に見付かった時に軽く舌打ちした事と言い、Noriは絶対に何か良からぬ事を企んでいたと思えてならない。

一抹の不安をまた1つ増やしながら、OWLとNoriは御在所サービスエリアを後にした。

 

 

Fri,16 2002 Nov. 23:56 愛知県名古屋市 都心環状連結付近

 

都心環状付近。

ここは、東名阪自動車道、東名高速道路、中央自動車道、名神高速道路、東海北陸自動車道が連結しているかなりややこしい場所である。何かに付けて常人では有り得ない失敗を意図も簡単にやってのける奇跡の変態Noriは、過去に帰省する時、中央道に行こうとして東名に乗ってしまい浜名湖に来て初めて道を間違えた事に気付いたり、中央道と名神を間違えて京都に行くまで道を間違えた事に気付かなかったりしたらしい。

だが、Noriのフォローの為に言っておく訳では決してないが、確かにここは複雑に入り組んでいるドライバー泣かせの場所になっており、行き先を知らせる道路標識も、イヤミのシェーみたいな格好をした矢印が所狭しと踊り狂っている看板ばかりが目立っていた。

OWL「おい、頼むぜNori。気付いたら富山だった、なんてゴメンだぜ、オレ。」

Nori「分かってるって。オレが何度帰省してると思ってるんだよ。任せとけって。あ、そうそう、ここを左に行くと浜松だよー。」

OWL「ってハンドルを左に切るなって!月曜からまた実験なのに何で帰省せにゃいけねんだよ。」

Nori「冗談、冗談。幾らなんでもそんな事しないよ。ガソリン代もったいないし。あ、ここを右に行くと京都にだね…。」

OWL「だからハンドルを右に切るな!中央道は左だ!左に切れ!お前が切らなきゃオレが切る!ついでにお前も斬る!

Nori「分かってるって。というか「きる」の字が違ってきてるから。いろんな意味で危ないからハンドル掴まないでよ。はい、左、左。」

下手すれば、富山どころかウラジオストク辺りにでも平気で連れて行かれそうだったので、必死になるOWL。

その甲斐あってか、騒ぐ阿呆と冷静な阿呆を乗せた車は、徐々に中央道へと近付きつつあった。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:06 愛知県小牧市 小牧ジャンクション

 

小牧JCTからどうにか無事に中央自動車道に来たアホ2人。だが、ここに来てまたもやNoriが不吉なマメ知識をひけらかす

Nori「いやさあ、独りで夜の中央道を走ってるとさ、何とも言えない不安感に駆られるんだよね。」

OWL「は?何で。」

Nori「実際に行って見れば分かるよ。高速道路の基準を東名にしてるOWLにはちょっとビックリするかもしれないね。」

怪しい薄笑みを浮かべて中央道へとハンドルを切るNori。何だ。中央道は東名とどう違うのだ。もうすぐ中央道だけど、特に普通の高速道路と大差無いぞ。

中央道に入った。変化はすぐに分かった。視界が一気に暗くなった。これまで街灯で照らされ続けたのが幻だったかの如く、急に前方に深い闇が立ちはだかったのである。

そう、中央道に入った途端、街灯の数が極端に減ったのだ。ほとんど皆無と言って良い。何だ、この高速道路。事故ってくれと言わんばかりではないか。

Nori「どう?暗いでしょ中央道。これがさ、独りで、しかも音楽も聞かずに2時間も3時間も走ってるとね、もう思わず発狂したくなるんだよね。街頭は無いし、周りに建物もそんなにないし、走ってる車もほとんど無いし。ホント、前後に全く車がないと自分が遭難してるんじゃないかと思うんだよ。高速道路を走ってるのに。たまに車見つけても、これがごつい長距離トラックばっかりでさ。ははははは…。」

前略母上様、OWL初めての中央道は最悪の滑り出しです

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:16 岐阜県多治見市 中央自動車道多治見インターチェンジ付近

 

中央道に入って減少しつつあった街灯が遂に無くなった。これからは反射板を頼りに進んでいかなければならない。何だ、この安全性に難がありすぎる高速道路は。こんなに予算が無いのか、この道路には。確かにNoriの言う通り、物凄く不安に駆られる道路だ。

その時、突然Noriが話しかけてくる。Noriも不安でしょうがないのだろう。

Nori「もうすぐ多治見インターなんだけどね、ここには今、日本でも数少ないダイエーがまだ残ってるんだよ。貴重だろ?」

どうも予(かね)てよりNoriのマメ知識は本当に限りなく無駄に近いマメ知識の様な気がするのだが、えも言われぬ不安に駆られていたOWLには、素直にウンウン頷(うなず)くしか出来なかった。

視界に、多治見ICの看板が入る。その直後、突然暗闇の中から巨大な建物が姿を現した。おお、あれが今や天然記念物的存在として名高いダイエー多治見店か。

なるほど、確かに看板にはアルファベットで、

E……………I………D…………E……………N………………?

OWL「おいこら、ダイエーエイデンになってるぞ。ここも絶滅だ。」

Nori「え、本当に?そうか…、ここもか………。」

何故か渋く決めるNoriを尻目に、OWLは

OWL「ダイエー、エイデン。う〜む、見事なしりとりだ。だけど、エイデンは「ん」で終わるから、もうこの建物の次は無いな。」

などと、意味不明な妄想にドップリ浸っていた。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:21 岐阜県土岐市 中央自動車道土岐インターチェンジ付近

 

まだまだ続くよ中央道。不安に駆られながらもOWLとNoriを乗せた車は確実に岐阜県を横切りつつあった。

ここでまた、Noriの限りなく無駄に近いマメ知識を言い放つ。

Nori「もうそろそろ土岐か。ここのインターは凄いよ。何と言うか、秘境真っ只中って感じだね。」

OWL「え、何処何処何処何処。」

かなり一生懸命あっちこっちキョロキョロ見回したのだが、何しろOWLは目の前にある物を何処だ何処だと言って一生懸命探すようなアホである。今回もまた、何処だ何処だと言っている間に土岐ICは遥か後方へ通り過ぎていってしまっていた。

OWL「ぐおー、見逃してもうたー、秘境インターチェンジ土岐。」

Nori「いいよいいよ、あんなんあっても無くてもいい様なもんだから。」

すいませんすいません、全国の土岐市の皆さんすいません。OWLは何も言ってないです。むしろNoriに言わされたんです。悪いのは全てNoriですぅ。

全ての罪をNoriに擦り付けつつ、毒舌も少しばかり激しくなりつつ、車は少しずつ目的地へと近付いていった。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:25 岐阜県瑞浪市 中央自動車道

 

勾配がますます酷くなり、曲がり角もきつくなってきた。街灯など、もはや遠い過去の話である。こんな道を高速道路にして良いのかと思ってしまう。

それでも瑞浪市に入ってしばらく進んだ辺りで、突如、視界に町明かりが入ってきた。恐らく、瑞浪市の市街地であろう。

OWL「おおー、久々の町明かりじゃー。」

Nori「どう?物凄くホッとするでしょ。久々に見る人工の明かりは。真っ暗闇で本当に遭難するかと思ったときに見えるもんだから、本当にこの町明かりを見ると特に危険な事に遭わなくても「助かった」って思うんだよね。

OWL「そうだなー、こんな山ん中でこんなに明かりが見れるとは思わないからなー。つーか、調べたんだけどさ、瑞浪市って市って名乗っている割に人口が5万人に満たないらしいじゃん?」

Nori「またそうやってどうでもいいことばっか調べる。でも、そうだとすると、あの町明かりに瑞浪市民の9割が集まってるんじゃないのかな。」

OWL「なるほど、ああやって一生懸命瑞浪市を都会に見せようとしているって訳か。うーん、瑞浪マジック。」

土岐市民に引き続き、瑞浪市民の反感も買いつつ、旅は進む。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:35 岐阜県恵那市 中央自動車道

 

それにしても、夜の中央道は無駄にドライバーを不安に駆らせている様に思えてならない。

ロクな町明かりも無く、照明らしい照明も無く、道しるべは標識と反射板だけ。強烈な勾配とカーブ。ドライバーの精神力を磨り減らすには十分過ぎる状況である。

だが、最も不安にさせる要素は、走っている車の数の少なさであろう。何しろ、前を見ても独り、後ろを見ても独り、という状況に、今回の旅でも幾度と無く遭ってきた。この状況が、OWLとNoriに何とも言えない不安となって襲い掛かってくる。

何しろ、前も後ろも真っ暗なのである。この様な状況が数分でも続くと、1本道をひたすら走っている筈なのに、今走っている道が間違えているのではないかという杞憂に近い心配事を本気でしてしまうのだから恐ろしい。

その内、このまま走っていったら目の前に川が見えてきて、その川の向こうでは沢山の子供が陰気な歌を歌いながら石でも積んでいる姿なんかが見えてくるのではないかという人として本気でヤバイ妄想に浸ってしまうのはOWLだけかもしれない

たまに車が見えたと思っても、それは大抵、大型トラックなのである。これがまた別の意味で怖い。

我らがダンクとか言う自動車と比べても、とても同じ生物自動車とは思えない威圧感。

しかも馬力があるもんだから、巨体の割に速い速い。怒り狂った獣の様な声を上げて爆走してゆく。

OWLとNoriの横を通り過ぎる大型トラック。実はこの瞬間が大型トラックの最も恐ろしいところである。

気圧の関係か、はたまた精神的な理由かは定かではないが、高速道路で普通乗用車が大型トラックに追い抜かれると、一瞬大型トラックの方に引き寄せられるという現象が起きるという事を聞いたことは無いだろうか。

下手すれば大事故にも繋がりかねないこの現象が、この漆黒の中央道でも延々と起きるのである。闇夜と相まってその恐怖感は格別である。

更にこの大型トラック共、図体がでかいクセして1人ではやはり怖いのか集団で走りやがってくださるのである。これがまた怖い。

トラックが群を成されると、その威圧感はこれまた凄まじい。

爛々と光り輝く赤いテールランプなんかを見ていると、昔テレビで見た「風の谷のナウシカ」のラストに出てくる怒り狂う王蟲(オーム)の群に見えてきてしょうがない。

OWL「おい、見ろよ。王蟲の群があんなところに。ナウシカー!ナウシカー!

Nori「錯乱し過ぎだよOWL。

OWL「その者、青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし…。」

Nori「だからナウシカはもういいって。」

OWL「それにしてもすげえよなあ、あの王蟲の群。」

Nori「ああ、本当だよ。オレ、前にこの辺りでさあ、やっぱりこんな夜中に帰省した時にさあ、道路が3車線になってるところあるじゃん?そこでさあ、前後左右大型トラックに囲まれちゃったまま数十分間走り続けてさあ。前が見えないから、この先、どっちにカーブしてるか分からないし、両側のトラックからは例の現象で引っ張られっぱなしだし、後ろからはでかいトラックに追われるし、あれはもう本当に死ぬかと思ったよ。うへへへへへ。」

OWL「おい、運転中にOWLの知らない世界に行くな。戻って来い。」

そんな錯乱合戦の中、大型トラックは王蟲へと華麗な転身を遂げていた。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:39 岐阜県恵那市 中央自動車道えなきょうサービスエリア付近

 

闇夜、急勾配、急カーブ、そして王蟲の脅威でOWLとNori(いやむしろNoriだけ)の精神は、もはや限界であった。

そこに現れた一際大きな明かり。かなり大きなサービスエリアが視界に飛び込んできた。

Nori「えなきょうサービスエリアか。丁度良いや。ここで休憩しよう。」

OWL「ぬ?えなきょう?」

「えなきょう」だと。何だそれは。

ひょっとしてあれか。古来よりこの土地の人々に祭られし雪山の神様である恵那神を崇拝する新手の信仰宗教か。毎月15日には、恵那神を祭った像に人柱を捧げ、4月から9月までは断食、肉はもとより魚も米も食べてはいけない。当然、禁酒という厳しい戒律も……。

そこまで妄想が暴走した所でOWLの目の前に「恵那峡サービスエリア」という看板の文字が入ってきた。

OWL「あれ、恵那峡って恵那じゃなかったん?」

Nori「恵那峡は有名な観光地だよ。怪しい信仰宗教じゃないって。」

OWL「あれ、恵那神を信仰するんじゃねえの?毎月15日は人柱で…。」

Nori「そんな事言うヤツはOWLくらいだよ。」

勘違いというには余りにも見当違いな間違いを嘲笑混じりに指摘されつつ、車は恵那峡サービスエリアに入った。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 0:40 岐阜県恵那市 中央自動車道恵那峡サービスエリア

 

御在所に続いて2度目の休憩となった恵那峡サービスエリア。

ここでのOWLの興味は、御在所で不法侵入者の濡れ衣を着せられる危機を冒してまで買った使い捨てカメラを意地でも使う為に何か面白おかしい物体Xが無いかという事に絞られていた。

駐車場に群を成して佇(たたず)む王蟲。トイレの鏡。うーむ、大して面白味は感じられない。

シャッターチャンスを逃さないために、カメラを片手に獲物を狙うハイエナのような目つきでうろつくOWL。何処からどう見ても立派な変質者の出来上がりである

一先ず、OWLはロクに晩飯を食べていなかったので、ここで遅い夕食をすることとなった。名前に魅かれてモツ煮込み丼という名の食べ物を注文するOWL。

そうだ、旅日記(本当は旅日記とはかなり程遠い内容なのだが、ここは敢えて旅日記とさせていただく)には旅の途中で食べた物の写真が必要不可欠ではないか。よし、使い捨てカメラで食べ物の写真を撮っていこう。

そう意気込んだOWLであったが、ここで突如問題が発生した。先ほどまで小脇に抱えていた使い捨てカメラが忽然と姿を消したのである。

おかしい。つい数分前までは間違いなく持っていたというのに、一体何処に置いてきたのだろう。

トイレの洗面所。ゴミ箱の上。ベンチ。ウッカリ置いてしまいそうな場所を全て見て回ったのだが使い捨てカメラの影も形も無い。落としたという可能性も考えられるが、カメラを落とす音が聞こえないほどOWLはまだ耄碌(もうろく)していないし、地面を見て回ってもカメラらしき物体は見られない。

ぐああ、何たる事だ。もしカメラを失くしたとなると、これからOWLに激写されるであろうあんな物体Xこんな物体Xを映像に収める事が出来なくなってしまうではないか。

出来立てのモツ煮込み丼に手を付ける事無くカメラを探し続けて数分が経ったが、カメラは一向に姿を見せない。諦めてモツ煮込み丼に手を付け、何気なく上着のポケットを弄(まさぐ)った時である。

OWL「ぬ?」

この手触り。ひょっとして。

取り出してみたら案の定、何処かでよく見た使い捨てカメラがあっけなく見付かった。横山やすしさんの「メガネメガネ」を本気でやってしまったOWL。一緒に探してもらったNoriの視線が痛い。

記念すべき写真1枚目を撮るのにこんなに苦労するとは思わなかった。

苦労して撮ったモツ煮込み丼
食べかけのモツ煮込み丼。
この写真を撮ったときには既に冷めかけていた。
でもうまかった。

 

OWLがモツ煮込み丼を食べ終わりかけた時、Noriが何やら怪しいドリンクを手にしていたので、ついついその写真も撮ってしまった。

怪しいドリンク
後方にうっすら心霊写真の様に写っているのはNoriの腕。

カメラの関係で絵柄がよく見えないのが悔やまれるが、それでも子供向け絵本に描かれているバイキンみたいな顔が描かれているのが分かるだろう。

そしてその上にぼんやりと見える文字。これはドリンクの名前である。ドリンクの名は「めざまし太郎」。つまり、ラベルに描かれている子供向けバイキン面がめざまし太郎というキャラクターであり、そのドリンクの名であると考えられる。

当然の事ながら、これまでに見たことも無い怪しさ爆発のドリンクにOWLは噛み付いた。

OWL「なんだ、その不気味なドリンクは。ジャイアンシチューか。

Nori「またそういうマニアックなところから攻める。これは見ての通りめざまし太郎っていうドリンクさ。これを飲むとさ、コーヒーを飲んだ時よりも眼が覚めるんだよ。運転して帰省する時は何時もここでこれを飲むんだ。ウチの親父はこれをいねむり太郎って言ってたけどね。それじゃ危なくて飲めやしないよ。」

OWL「ほお、そんな飲み物があるんだ。」

Nori「そうそう。このドリンクはねえ、すごいんだよ。何しろ、幾ら疲れてても眠くならないからね。車を長時間運転してても大丈夫なんだ。」

OWL「なんかドーピングみたいなドリンクだな。」

Nori「あ、でもね。去年の冬頃ってオレ週末になる度に実家に帰ってたじゃん。」

OWL「ああ、週明けから突然3日くらい音信不通になったからどうしたんかと思ったら下宿でぶっ倒れて人知れず死にかけてたってヤツでしょ?」

Nori「そうそう、丁度その倒れる寸前の帰省の時は、めざまし太郎を飲んでも眠くて結局1時間半も寝ちゃったからね。コーヒーも一緒に飲んだのに。あの時はよっぽど心身ともに限界を超えてたんだろうね。」

OWL「だから何でそんなヤクザなスケジュールを組むんだって。」

Nori「なんでだろうねえ。いつもそうなんだよな。」

結局、2度目の休憩はカメラの紛失騒ぎとめざまし太郎の出現によって見事に妨げられる結果となった。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 1:30 岐阜県恵那市 中央自動車道恵那峡サービスエリア付近

 

低レベルな騒ぎばかり巻き起こした恵那峡サービスエリアを発つ前に給油をすることと相成った。何しろ、高速道路としては有り得ないくらい急勾配の上り坂をかっ飛ばしてきたのである。ガソリンの消費量も尋常ではなく、つい数時間前に補給したにも関わらず、ガソリンは底を尽きそうであった。改めて中央道の恐ろしさを痛感した瞬間である。

OWL「すげえガソリンの減りだな。流石は中央道。」

Nori「でしょ?ここで給油しとかないとあの闇夜と王蟲溢れる中央道で立ち往生だからね。それだけは避けないと。」

OWL「それだけは避けたいなあ。悪夢だよそりゃ。」

こんなつまらない会話をしつつ、車は再び漆黒の王蟲道中央道へと入っていった。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 1:42 岐阜県中津川市 中央自動車道恵那山トンネル岐阜県側

 

まだまだ続く中央道。もう、暗い道も急カーブも急勾配も慣れてきたが、王蟲の恐ろしさだけはどうしても慣れないOWL。

Nori「ようやく長野県に入るんだけどね、1つ長いトンネルを通るんだ。あ、ちなみに今は暗くてよく見えないけど、ここら辺は全部崖だよ。」

どんな時でも不吉なマメ知識は欠かさないNori。

Nori「それがほら、あれだよ。恵那山トンネル。青函トンネルに次ぐ、日本で2番目に長いトンネルなんだ。」

Noriがそう言い終るや否や、車は恵那山トンネルへ侵入した。

日本で1番長い青函トンネルがどんな代物なのか、実際に行った事が無いので比べようが無いのだが、OWLがその昔事ある度に通った東名日本坂トンネルと比べると、照明が少なく、日本で2番目に長いトンネルと言うには些か質素な造りになっている。

更に道が狭いせいかトンネル独特の圧迫感が強く、例の王蟲の引力の脅威も増している。何だどうした恵那山トンネル。金が無いのか中央道。

だが、トンネル内の道幅は狭いものの流石に日本でも有数の長さを誇るだけの事はある。出口が全く見えないのだ。視界に入ってくるのは、道路と僅かに存在する爆走中の王蟲のテールランプ、そしてひたすらに続く半円状の天井のみである。

何だかドラえもんで出てきたタイムマシンみたいだ。

タイムマシンに乗っているときの景色と酷似している。壁に歪んだ時計の絵でも描けばピッタリだ。それをNoriに熱弁したら明らかに困った顔をした。

 

突然、Noriがこんな事を言い出した。

Nori「はい、もうすぐ長野県だよー。注意してないと見逃しちゃうから注意してねー。」

ぬ、何処だ何処だ。県境というからには、それを知らせる標識か何かがある筈である。一所懸命に辺りをキョロキョロ見回すOWL。

その刹那である。

突然、道路上に高速道路では珍しい、一時停止の線を思わせる道路を横切る白線が現れた。いくら一時停止を思わせると言っても、当然の事ながら一時停止の線ではないだろう。そもそもこんなところで一時停止をしたら面白い事になってしまう。

何だろうと思っているうちに車は白線の上を通り過ぎた。そしてNoriが言った。

Nori「はい、長野県に入ったよー。」

OWL「は?じゃあ、ひょっとして今の白線は…。」

Nori「そう、あれが岐阜県と長野県の境目。地味でしょー。」

やけに嬉しそうに言うNori。

それにしても、県境の目印があの白線1本とは、地味すぎるにも程がある。看板作る金が無いのか中央道。道路公団民営化の影響なのか中央道。これが東ドイツと西ドイツの国境だったら今頃OWLとNoriはウッカリ不法入国扱してしまって車ごと蜂の巣だぞ中央道。時代錯誤もいい加減にしろ中央道OWL。

何はともあれ、OWLとNoriはトンネルの中で長野県に侵入した。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 1:46 長野県下伊那郡阿智村 中央自動車道恵那山トンネル長野県側

 

おかしい。

恵那山トンネルがどれだけ長いか知らないが、出口が一向に見えてこない。

OWL「おい、出口が見えないぞ。本当にこのトンネルは長野県に通じているのか?」

Nori「当たり前だよ。オレは何度もここを通って帰省してるんだから。」

OWL「トンネルを越えたらそこは雪国じゃなくて黄泉の国だったなんてことは無いだろうな。」

Nori「訳の分からない心配事をする。大丈夫だって。いくらオレでも1本道で迷いっこないよ。」

OWL「そこで迷ってこそNoriの存在意義が確立されんじゃねえか。いいか。昔読んだ心霊関係の本によるとだな、トンネルというものはしばしばこの世とあの世の境目になっててだね、そのために心霊スポットにもトンネルが多くてだね…。」

Nori「丹波哲郎じゃないんだから、そんなオカルト話はやめてくれよ。ほらほら、出口だよ出口。」

OWL「あ、本当だ。」

杞憂帝王OWL、数年ぶりの長野県である。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 1:52 長野県飯田市 中央自動車道

 

トンネルを抜けた辺りから、Noriがやけに落ち着かない。

サイドミラーを見たりバックミラーを見たりと、頻(しき)りに後ろの様子を窺っているのである。

OWL「お、どうしたNori?後ろに何かあるんか?」

Nori「ちょっとね。オレらと全く同じスピードで後ろをついてくる車がいるもんだから。」

OWL「ほう?」

Nori「いや、あのさ、オレって見ての通り小心者じゃん?」

何やら同意を求められたが、高校時代から「足軽」だの「山賊」だのと言われ続けたその濃い風貌からはとても「見ての通り小心者」という言葉を満たしているとは思えない。

更に、夜中に大学に忍び込もうとして警報機を鳴らしたりする辺り、見ての通りだろうが無かろうがとても小心者とは思えないというのが正直なところだったのだが、ここで話の腰を折るのも何だと思い、

OWL「はあ、まあ、そうかもしれんねえ。」

という曖昧な返答をするに止まった。当然の事ながら、Noriのトークはこれに止まる事無くまだまだ続く。

Nori「だからさ、今回は一応お客であるOWLがいる訳だから、いつも以上に安全運転で行ってるんだよね。だから、今も深夜だけど80キロなんてゆっくりペースで行ってる訳で。」

確かに、深夜の高速道路で時速80キロは驚くべき安全運転と言っても過言ではない。

OWLなどその昔、友人知人10人ばかりで旅行に行った時、車2台で行った訳なのだが夜中の高速道路にて友人知人の車同士でカーチェイスを始めやがった為に、厭がおうにも時速140キロの世界を体感してしまい、高速を出るまでの2時間半、盛り上がる友人知人を尻目に1人三途の川を見ていた事がある。

まあ、その友人知人が類稀なるスピード狂だったとしても、夜中の高速道路ならば時速120キロで飛ばす車は珍しくない。現にOWLとNoriの車は、数え切れないほどの自動車に追い抜かれ続けていた。

にも関わらず、後ろを見てみると確かにピッタリとくっついて走っている車がいる。確かにこれは少し異様だ。

唯でさえ漆黒に包まれているが故に退屈してしまう深夜の中央道。OWLとNoriがこの少し異質な車を弄くらない訳が無かった。

OWL「ストーカーかな。ストーカーかな。」

Nori「どうせだったら若い女の子の2人組みがいいなあ。」

OWL「発想がオヤジ臭いんだよ、Noriは。」

Nori「いいじゃんか別に。そんなに言うんだったら、もし女の子2人組みでもどっちもオレが頂いちゃうよ。」

OWL「何だそりゃ。2対2ならそれぞれが1人頂けば丁度いいじゃんか。」

Nori「ここは彼女いない歴と実年齢が一緒のオレに優先権があるでしょ。女泣かせのOWLは道路の脇で女の自縛霊とロマンスしてな。」

OWL「意味不明だ!何が女泣かせだコラ。つーか、まだあの車が女の子の車って決まったわけじゃねえぞ。男2人組みかもしれないぞ。しかも、ただの男なら未だしも、ホモだったりしたらどうするよ。モーホー&ストーカー。

Nori「気分を害するような事言わないでくれよ。じゃあ、何?あの車はオレの車にカマ掘って、ついでにオレもカマ掘られるって?」

OWL「そうそう。それやったらオレも心置きなくNoriに2人を任せて道端の女自縛霊とランデブー出来るわ。Noriはついでにホモの動物霊ともフィーバーしてな。」

ナチュラルハイになっているせいか、会話の知的レベルが物凄い勢いで下がってゆく。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 1:54 長野県飯田市 中央自動車道座光寺パーキングエリア付近

 

ホモだのストーカーだのといった極めて頭の悪い会話は止まらない。

座光寺パーキングエリアを通り過ぎた時、哀れその小さなパーキングエリアもまたOWLとNoriの大馬鹿トークの贄にされてしまう事に。

OWL「うおお、すげえ。おいNori、見てみろよ。王蟲がいっぱいパーキングエリアに止まってるよ。」

Nori「夜のパーキングエリアは何処もそうだよ。いや、パーキングエリアなんて止まるのはほとんど王蟲だよ。だからさあ、こういうところのトイレは大体男用が汚くて女用は全然汚れないんだ。トラック運転手のアニキしか使わないからね。」

何故か見てきたかのように言うNori。本当に見てきたのではないかという疑惑がOWLの中で浮上した。Noriならやりかねん。

そんなOWLの心情を知ってか知らずか、Noriは話を続ける。

Nori「ずっと前の帰省の時は参ったよ。ちょっと運転に疲れてさ、トイレにも行きたかったんで夜のパーキングエリアに止まったらさ、トラックのアニキたちが満天の星空の下で宴を開いてるんだよ。オレはトイレに行きたかっただけなのに、アニキたちに「おい、兄ちゃん!兄ちゃんもオレたちと一緒に飲まねえか!」ってアニキの宴に誘われちゃってさ。結局、逃げてきたけど、あれには参ったよ。ほんと。」

この辺りから王蟲はアニキへと進化をし、トラックを見つける度に2人して「アーニキだー!!」と叫ぶようになってしまった。2人のIQが地に落ちた瞬間でもある。

夜のパーキングエリアに御用心。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 2:04 長野県駒ヶ根市 中央自動車道駒ケ岳サービスエリア

 

駒ヶ根なのか駒ケ岳なのか、どうにも名前を混同しやすいこのサービスエリア。OWLもこの駄文を書く際に、どっちだったか不安だったのでネットで調べたら、駒ケ岳と駒ヶ根の両方が出てきて大いに焦った。どうやら、混同しているのはOWLだけではないらしい。

そんな人々を混乱の渦に叩き込む駒ケ岳サービスエリアにて3回目の休憩を取る事となった。

しかし、幾ら休憩をしようとも、またいらん騒動を巻き起こして休憩がぶっ潰される可能性が大いにある。そのため、OWLはもう開き直って往路にも関わらず早くも土産物を物色し始めた。

ポッキー、ハイチュウ、きのこたけのこすーぎのこ。

信州はOWLの地元静岡に負けず劣らず限定品が多いと聞いていたが、想像以上の多さだ。これに、更に野沢菜や信州蕎麦と言った信州独特のお土産もあるのだから、OWLなんかはつい売店だけで信州を満喫してしまいそうになってしまう。何より、某名古屋駅の様に名古屋のクセして三重県名物赤福を売るような節操の無さが無くて大変よろしい。

結局、OWLは知人に頼まれていた信州限定のお菓子を数点購入した。

かなり満足気に店を出ると、店の隣側に何やら自然公園のような、芝生と低木で包まれた小高い丘が鎮座していた。後で調べて分かった事なのだが、駒ケ岳サービスエリアには遊歩道があり、バードウォッチングが出来るらしい。

だが、今は漆黒の闇蔓延る夜。得体の知れない猛獣やホモの動物霊ならばウォッチング出来るかもしれないが、バードウォッチングなどとても出来る状況ではない。しかし、魅かれるものがあった。

ダメ元でNoriに頼んでみる。それに対するNoriの返答はこうだった。

Nori「あー、いいよ別に。オレ1人で松本に帰るから。」

本気で置いて行かれそうな口ぶりにOWLは生命の危機を感じ、一目散にNoriの愛車へ転がり込んだ。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 2:27 長野県伊那市 中央自動車道

 

恵那の次は伊那か。どうやら、この辺りの人々はよっぽど「那」の字が好きらしい。まだ2つしか見てないが、まあ那須もあることだし、そういう事にしてしまう。

それにしても眠い。バイトの疲れが今頃になって再燃してきた。

OWLは夜更かしが好きなのだが、それは夕方から夜中にかけて寝ているから出来る芸当なのであって、昔から人より爆睡するOWLの周囲には既に睡魔の集団がスクラムを組んでいた。

目蓋(まぶた)が重い。記憶も飛び飛びだ。Noriの言う事も何となくしか聞こえない。

眠気を覚ますために、自らの腿を抓(つね)ったり、後方からトレーラーが迫ってくる度に

OWL「アーニキの追撃だあああ!!

と絶叫してみたりと、いろいろ試みたのであるが、それでも睡魔のスクラムはなかなかに強固で、OWLは徐々に夢の世界へと引きずり込まれようとしていた。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 2:32 長野県伊那市 中央自動車道小黒川パーキングエリア

 

駒ケ岳サービスエリアを出て10分しか経っていないのに、Noriが小黒川というパーキングエリアに寄って行きたいという。何でも、パーキングエリアにしては綺麗で、OWLにも見せたいとのたまうNori。

睡魔のスクラム効果でもはや心ここに在らず状態だったOWLは二つ返事でOKを言い渡し、車は一路小黒川パーキングエリアへ。

入ってみると、確かにNoriの言う通り、かなり洒落た造りのパーキングエリアである。

手入れの行き届いた木々、新しい石で出来た道、所々に点在する街灯も新しく、幻想的な雰囲気を醸し出している。広さもなかなかだ。

Nori「どう?なかなかいいでしょ。特に何が良いって、駐車場がアニキたちと隔離されているってのが良いよね。」

あ、本当だ。駐車場は普通乗用車と大型トラックが別々になっていた。なるほど、これならば止める時に生じる混乱も最小限で済むのかどうかは分からない

結局、滞在している数分間、OWLは束の間の仮眠をし、Noriはコーヒーを購入した。

これまで書いてなかったのだが、Noriは休憩の度にコーヒーを買っていた。眠気覚ましの為であろうが、少々買い過ぎのような気もする。

Noriは大学でも事ある度に「カフェインが足りねえ」とかほざいてコーヒーを買うのだが、胃の方は大丈夫なのだろうか。

そんなカフェイン帝王Noriにいろいろ突っ込みたい気分だったのだが、睡魔がそれを許さず、車は何事も無かったかのように(特に何事も無かったのだが)走り出した。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 2:46 長野県上伊那郡辰野町 中央自動車道

 

いかん、本当に眠い。記憶が飛び飛びだ。

Nori「はーい、そろそろ静岡にも流れてる天竜川だよー。」

どらどらと眠い眼をこすって辺りを見回しても視界は漆黒の闇夜ばかりなり。

アホ面を晒している間に、天竜川はあっという間に通り過ぎていた。

それ以後も、眠気で口数が減り、何かを言われても「ほえぁ」とか「へにょれ」とか脱力感極まる返事しか返せなくなっているOWLに対し、Noriはどんどん饒舌になってゆく。

度々思うのだが、こやつ一体何者だ。

いつもは意地らしいまでに聞き役に徹するNoriであるが、この時ばかりはガンガン話すわ話すわ、もうOWLが虫の息だという事などお構い無しである。

これで会話を覚えていれば、NGワードたっぷりのトークをここに載せれたであろうが、生憎OWLにそんな気力は無く、旅はどんどん進んでいくのである。実に惜しい事をした。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 3:01 長野県岡谷市 岡谷ジャンクション

 

もはや夢遊病患者の様な状態になっているOWL。

ここ岡谷ジャンクションから中央道へと別れを告げ、長野自動車道へと侵入する。

まだ、奇声を上げたり暴れまわったりして睡魔と戦っている。その間にOWLの長野道デビューは済んでしまった。

中央道以上に最悪の滑り出し長野道。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 3:07 長野県塩尻市 長野自動車道塩尻インターチェンジ

 

最悪な滑り出しだった長野道は、その最悪な状況を打破する間も無く塩尻インターにておさらばと相成った。

この時もう、夢の世界にドップリ浸っていたOWLにはこの時の記憶がほとんど無い。

ただ、Noriが眼をぎらつかせながら、

Nori「塩尻って英語で言うとソルトヒップだよね。なんか笑っちゃうよね。」

などと言っていたのだけは何故か覚えている。運転前に睡眠をとって来たとは言っていたが、このテンションは何だ。本当に何者だNoriは。

あ、そうか。恵那峡で飲んでいた怪しいドリンク「めざまし太郎」の効果なんだ。

これを書いている今、気付いた。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 3:07 長野県松本市

 

ようやく松本市に侵入である。

何度も書いてきたが、ここでもしつこく書く。眠い。眠くて堪らん。

この辺りになると、記憶など皆無に近い。

中央道以上にきつい勾配や急なカーブに体を前後左右に揺すられるのがまた気持ち良く、睡魔と友達どころか心の友と書いて心友(しんゆう)になっていた。今、10秒でも眼を瞑ったら速攻で寝る自信がある。

その間も、Noriは楔(くさび)形文字がどうのこうのと、訳の分からないトークを展開していた様な気がする。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 3:17 長野県松本市 Nori邸

 

予想通り騒動を巻き起こしつつ、ようやくNoriの家へと辿り着いた。

残念ながらNori邸の外観は、竪穴式住居でもなければ寝殿造りでもない、極普通の一軒家(しかも結構新しい)だった。場所も新興住宅地の中と至って普通である。

まあ、ネタにならなくて残念だったが、泊まる分には不自由はなさそうで安心した。

辺りは寝静まっているせいか静寂に包まれている。家自体は松本市街地よりも少し高いところにあるらしく、家から松本市街の光がよく見える。それは宛(さなが)ら夜空の星々が地上にも映し出されているかのようだ。

家に入ってみる。

これまた普通だ。何かの罠とか、怪しい祭壇とか、そんなものを期待していたのだが、やはりその期待も裏切られる結果となってしまった。

入ってすぐ、居間らしき部屋に案内される。

生憎めっきり普通な居間
勝手に他人の家の居間の写真撮って勝手にサイトに載せるのってやっぱヤバイっすかねえ

コタツでまったりしていると、何処からとも無くけたたましい犬の鳴き声が。

声の主はすぐに現れた。Nori邸で飼われているチルという犬らしい。結構小さい。室内で飼われている犬はこれくらいが標準なのだろうか。そしてこの子犬、どうやらメスらしい。

困った。OWLの実家でもメス犬を飼っていて、その臭いが体に染み付いているせいかメス犬とはどうも相性が悪いOWL。この時も案の定、夜明けにも関わらず物凄い剣幕でギャンギャン吠え立てるチル。ものの数分でNoriの手によって退場させられる事と相成った。

わざわざ夜食まで用意してくださった様だが、流石に旅の疲れが凄まじかったため、夜食は朝食まで取っておく事にし、OWLは寝室に案内された。

 

 

Sat,17 2002 Nov. 4:01 長野県松本市 Nori邸

 

Noriに案内された部屋は何と東京の大学に下宿する為に空いていたNoriの妹さんの部屋であった。女性の部屋にはほとんど入った事が無いOWL(姉上の部屋にすらあまり入らない)、慣れないためか寝ぼけていても恐縮してしまう。

しかし、恐縮しても眠いものは眠い。OWLは予め用意されていた布団に潜り込むと、あっと言う間に夢の世界に入ってしまった。

 


松本滞在篇へ続く


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