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〜第二部 松本滞在篇〜
Sat,17 2002 Nov. 8:40 長野県松本市 Nori邸
布団に入る前、睡魔と戯れながらも僅かに残っていた思考能力でOWLは自らの体調から、きっと今夜は夢を見ないであろうと予想していた。OWL、疲れているときというのは、不思議と夢を見ないのである。
案の定、気が付いた時には既に夜は明け、日の光が差し込んでいた。そして目の前に見えるのはジャージを着た山賊………ぬ、山賊だと。
山賊だと思っていたのはNoriだった。どうやらOWLを起こしに来たらしい。何でも、今日は色々と予定があるのでそろそろ起きて欲しいのだという。
正直、4時間半という睡眠時間はOWLにとっては圧倒的に不足していたが、既に夜食や布団を用意してもらっている手前、無下に断る訳にもいくまい。それにネタにもなるだろうと思い、OWLはNoriの申し出を了解し、朝食の為に居間へと急いだ。
Sat,17 2002 Nov. 9:02 長野県松本市 Nori邸
居間に行くと、Noriの父上と母上、そして弟さんがいた。
Noriの父上。
前に一度、山道で自動車を運転中に後続車に抜かれたその瞬間、みるみるその形相が険しくなり、聞くに堪えない罵詈雑言を吐き出しながら抜き返そうと山道を爆走して助手席に座っていたNoriが肝を大いに冷やした、というエピソードをNoriから聞いていたので、角刈りにねじり鉢巻が似合う筋肉隆々強面のおじ様を想像していたOWLであったが、実際の姿はメガネをかけ、ニコニコした人の良さそうなおじ様であった。
OWLの想像(妄想)が物凄かっただけに、つい拍子抜けしてしまった。それともあれか。昔は悪だった、というタイプか、はたまた何かの拍子に狂気のスイッチが入ると豹変してしまうタイプなのだろうか。
Noriの母上。
こちらはNoriから事前にどんな人か全く聞いていなかったので、変な先入観による拍子抜けも全く無かった。
第一印象としては、ハキハキと話すその姿からしっかりとした人なのだろうという印象があった。その言動を見ると、何故か何処と無くOWLの母上と似た部分がある様な気がした。
Noriの弟さん。
Noriより10歳年下と聞いてかなり驚いた。まだ小学生じゃないっすか。
この年齢になると、思春期に突入するせいか、人見知りするタイプはますます人見知りするものなのだが、Noriの弟さんもまたそのタイプだったらしく、シャイなあん畜生浜松代表であるOWLということもあって、お互いまだまだ一言二言話したり会釈をするのが精一杯の様に思えた。
しかし、10歳年上の兄であるNoriに容赦無く手厳しいツッコミを入れる辺り、何やら大器なるものを感じさせる。
東京に下宿している妹さんに会えなかったのは残念ではあるものの、この時、Noriの家族と初対面する事となった。総合的な印象としては極普通の家族(Noriを除く)といった感じであった。しかし、OWLは凶悪犯の写真を見ても「普通のおじ様」と言う完全に見当違いな印象を抱くような輩なので、ひょっとしたらこの家族の方々にも強烈な個性が隠されているのかもしれないと、相変わらず人様に失礼な事を考えていた。全く、この癖は何とかならないものか。
ここに来て急に1つの疑問が生じた。
Noriのその限り無く濃い外観は果たして父上似なのか母上似なのかという事である。
しばしば山賊と謳われしNoriの顔には大根を下ろせそうなくらい強固な髭がビッシリと生えている。しかし、Noriの父上は全く髭が濃くない。当然、Noriの母上には髭のひの字も窺い知れない。そもそもこの兄弟、顔つきが全く違う。嘗て、妹さんのプリクラをNoriに見せてもらった事があったが、妹さんとも顔つきが全く違う。
更に、Noriは両親と一致する顔のパーツが少し見ただけでは全く分からない。普通は、OWLの様にパッと見ただけで「父親似だ」とか分かるものなのだが。どうなってんだこりゃ。
まさか。
その時OWLの脳裏を過ぎったのは、雪がちらつく空の下、「拾ってください。名前はNoriです。」と書かれた段ボール箱の中で毛布に包まれて泣きじゃくる顔の濃い赤ん坊。それを見つけ、駆け寄る若かりし日のNoriの両親。嗚呼、典型的お涙頂戴ストーリー。
堪らなくなってついついNori本人に聞いてしまった。
OWL「あのさあ、Noriってどっち似なんだ?」
Nori「あ、やっぱり似てねえとか思ったんでしょ。それもその筈だよ。外見に限って言えば、オレは両方の血を半々ずつ受け継いでるんだ。見た目にはどっち似とか分からないと思うよ。妹は父さん似、弟は母さん似だよ。」
どうやら完全にOWLが考えていた事を見抜かれていたようだ。
それにしても、これだけ三者三様の顔を持つ兄弟も珍しい。OWLも3人兄弟で、父親似のOWLとは異なり、姉上と賢弟は母上似である事から、友人知人に姉弟を紹介しても「似てねえ」と一蹴されるような人生をこれまで歩んできた訳であるが、Noriの兄弟はそれ以上であった。
世の中は広い。
Sat,17 2002 Nov. 9:05 長野県松本市 Nori邸
Noriの家族との挨拶も済ませたところで、Noriが風呂を沸かしたから入ってくれみたいなことを言ってきた。
丁度良かった。OWL、出かける前にシャワーを浴びていたものの、ここに来るまでに地味なスリルを経験しまくって冷や汗をガンガンかいていたのである。
二つ返事で了解したOWL、早速ありがたく風呂を借りる事と相成った。
だが、ここで一抹の不安が湧き上がる。
実はOWL、他人の家の施設を使うのを非常に苦手としているのである。
各々の家は、当たり前だがそれぞれ作りが異なっている。一般の方ならば、他人の家のものを使わせて貰う場合は、瞬時にその家の様式に適応して難なく凌いでいるのであろう、
しかし、ここはアホ極まるOWLである。そんな事に瞬時に適応するスキルなど持ち合わせているわけも無い。天変地異が起きると真っ先に死ぬタイプである。
そのクセ、いらん好奇心は旺盛なものだから、他人の家で度々低レベルな騒動を起こす。
例えば、OWLの実家は、手抜き工事のせいか、蛇口の開閉が他の家のものと逆になっていた。他の人から見たらOWLの家の蛇口は閉める方向に捻(ひね)ると開き、開く方向に捻ると閉まる
それは裏を返せばOWLにとって他の家の蛇口が逆になってしまう事に等しい。そのため、手を洗う為に水を出し、洗い終わった後、蛇口を閉めようと普段通りにキュッと捻ると水は止まるどころかゴバーッ!と音を立ててどえらい勢いで流れまくってしまうのである。
こんな事では手を洗う度にずぶ濡れだ。トイレから帰ってきたOWLを見て「どうしたの?」と聞かれる事も多々あった。
また、こんな事もあった。
神戸の従兄弟の家に家族で泊まりに行ったときのことである。
久々似合った従兄弟、そして賢弟と共に風呂場でキャーキャー騒ぎながら体を洗い、さて出るかという時に悲劇は起こった。
風呂場のドアは、レバーの様なノブが付いている様式のものだったのだが、その下に何か出っ張りがある。その出っ張りに興味を持ってしまったのがそもそもの間違いの始まりであった。
その出っ張りを捻るとカチャリと聞きなれた音がする。鍵だ。瞬時にそう思った。
ドアノブを回してみる。動かない。やっぱりだ。OWLの予想は見事当たった。
予想が当たって調子に乗ったOWL。ほー動かない動かなーい、などと思いながらドアノブを無理矢理捻ったその時である。
バキッ!
ドアノブは音を立てて折れた。OWL顔面蒼白である。
結局、両親にこっ酷く叱られ、叔父上と叔母上に平謝りした記憶がある。
こんな幾多の事件を巻き起こすようなOWLである。慎重に行わなければ、また叱責&平謝りをする羽目になってしまう。
着替えとタオルを手に風呂場の脱衣所に侵入。何かOWLを脅かすような妙なものは無いか辺りを見回す。もし見つけても手出しは厳禁である。
まあ、特におかしな所も無い至って普通の脱衣所である。安心して服を脱ぎ始める。大丈夫だ。先に述べた事件だって小学生低学年の頃じゃないか。いくら精神年齢5歳だと言っても、15年近く経っていればそこそこ成長もしている筈だ。
だが、それは早計というものであった。
風呂場の扉を開けようと手を掛けたときのことである。扉は極普通の引き戸。引っ張ると扉がジグザグに折れ曲がるタイプの至ってスタンダードなタイプだ。
しかし、OWLの顔色が変わった。開かないのだ。幾ら引っ張っても開かないのである。
押すタイプかと思ったがそうでもない。何をしても扉は一向に開く気配が無い。何だこれは。
落ち着け。落ち着くんだOWL。下手な事をして風呂場のドアを薙ぎ倒したりしたらNoriの家族からドアクラッシャーの異名を頂き、評価が出会って数分で地に落ちてしまうぞ。
何処をどうしたのかは覚えてないが、とにかく10分ほど素っ裸でドアと格闘した末、辛くも勝利する事が出来た。さて、風呂場に侵入である。
風呂場もこれまた一苦労であった。何しろ、風呂場には嘗てOWLを散々苦しめた蛇口を使わなければならないのである。しかも、周知の通り風呂場の蛇口は洗面所や台所の蛇口よりも複雑だ。これは心してかからねば。
案の定、カランで水を出そうとして失敗し、シャワーで冷水を頭からかぶったり、妙なツマミを思いっ切り捻ったら戻らなくなって大いに焦ったりしたものの、何とか体を洗って湯船に浸かり、風呂場から脱出すると言う基本作業をやってのける事が出来た。どうだ、人間は成長する生き物なのだぞ。
まさか風呂場の話でこんなに長くなるとは思わなかった。
Sat,17 2002 Nov. 9:31 長野県松本市 Nori邸
風呂から上がった後、夜食になる筈であったカレーを頂く。このカレーに魔女の秘薬に用いられる怪しげな材料でも入っていれば、このカレーでまた1つ小噺が出来るのだが、至って普通の外見であり、味も普通に美味かったのでこれ以上触れない事にする。
まだ大脳が爆睡している状態でカレーを食べていると、Noriが来てこう言った。
Nori「いやあ、悪いね。家族の用事に付き合わせちゃって。」
OWL「で、これから何処に行くんだ?」
Nori「オレ、ちょっと書道の表彰式と展覧会に行ってカメラマンやらなきゃいけないんだ。ウチの家族、書道一家でさ、今回も母さんと弟が受賞するもんだからね。それにウチの教室の子も何人か受賞しているから。」
OWL「ほお、書道か。」
書道というか、習字ならばOWLの兄弟も小学校の頃やっていた事を思い出した。
家の近くの公民館のような所で毎週金曜日に、「黙って喋れ。」が口癖のお爺様によって開かれる書道教室に通っていたのだ。
確かあの時は、兄弟3人で事ある毎にいろいろな賞を取って、アホみたいにトロフィーをゲットしまくっていた。
OWLは特に早く終われるという理由で硬筆が好きであり、また得意にしていた。毎月配布される書道の雑誌に載った事もあるし、何やらデカデカとしたトロフィーを貰った事もあった。
しかし、その輝かしい歴史は何処へやら。OWLの硬筆の上手さは小学校の6年間で早くもピークを向かえ、今では3歳児が書いた象形文字並の文字をノートに走り書きするまでに腕は衰えている。得意だった硬筆でさえこんな調子なのだから、毛筆でもやらせたら突如意味不明な芸術に目覚めて墨を辺り一面にばら撒いた挙句一気飲みするくらい腕が落ちているに違いない。落ちてるのかそれ。
もはや、完全に失われた技能と化した書道。それが約10年の時を経て、再びOWLに少しだけ近付きつつある。
今思い返せば、こんな洒落た事も考える事が出来ただろうが、何しろ当時のOWLは歩く脳死状態だったため、無我の境地でカレーを口に入れていた。
Sat,17 2002 Nov. 9:54 長野県松本市 Nori邸
カレーを食べ終え、身支度をして外に出た。
空は綺麗に晴れ渡っている。日の光の眩しさに思わず目を細める。
目が光に慣れてきた時、OWLの目に飛び込んできたのは何とも壮大な景色であった。
どんなに素晴らしい景色でも写真に収めると色褪せて見えるのは何故だろう眼下に広がるは松本市街。盆地の中で寄り添うように密集する家々。そしてそれを抱きかかえるかのように周りを囲む山々には、既に雪の冠を被っているものすらある。
周囲の山々に比べ、人の街の何と小さい事だろう。所詮、人の築いた文明など自然の極一部に過ぎない事を痛感させる。
圧巻にして爽快。こんな素晴らしい景色を見ていると、ついついOWLは俗世間から離れて仙人の様に山の中で霞でも食って生活していきたくなってしまう。
そんな気分に浸っていると、不意に声がした。
Nori「何してんのOWL、早く行かないと間に合わないよ。」
おっと俗の塊Nori。OWLは一瞬にして仙人の様な清らかな心から罰当たり溢れるクソガキの心に戻ってしまった。
Noriの車に乗り込み、出発。本日の罰当たりツアーも、まだ始まったばかりである。
Sat,17 2002 Nov. 10:25 長野県松本市 ジャスコ松本店
車の行き着いた先は、ジャスコ松本店であった。どうやら、目的地に一番近い駐車場がここらしい。
そのジャスコ松本店の隣に、妙な古い建物があった。明らかにジャスコの一部とは考え難いその古い建物はNoriの説明のよると………えーと、何だったっけかな。
残念な事にNoriによるこの建造物が何かという説明は、ほとんど覚えていない。何しろOWL、自分の興味の無いものに関しての忘却能力には定評がある程だ。確か、2、3回説明してもらったような気がするが、その延々とされた説明の中で辛うじて覚えているのは以下の数点のみとなっている。
・ 昔に立てられた何かの工場。
・ 歴史的価値もあるくさい。
・ 今でも工場としては現役。日々働く人で溢れる。
・ 駐車場は微妙にガラガラだった。
・ Noriが頻りに写真を撮るように促していた。
何とも適当に覚えているもんだなあ。書き出してみて改めてそう思った。
価値ある歴史的建造物もOWLのアホの前では形無し
Sat,17 2002 Nov. 10:32 長野県松本市 某多目的ホール
ジャスコ松本店から歩いて数分。何とも大きなホールにて、書道の授賞式が行われた。授賞式の正式名称は長野県書道展松本地区賞状授与式。舌を噛みそうな名前である。
適当に座っててという、Noriのゲストをゲストと思わない粗野な扱いに、OWLは歯を食いしばって耐えながら敢えて言うとおりに開いている席に適当に座った。
続々と人が集まり、式の始まりが近付いてきた事を感じさせる。Noriは前の方でいそいそとビデオの準備をしていた。休日でも忙しい輩である。
そして、如何にも達筆な字を書きそうな白髪のお爺さんがおずおずと現れて始まりの言葉を弱々しく言い放った。厳かに式が始まったのである。
だが、厳かな式は、OWLにとっては眠くなる式とも言える。案の定、睡眠時間4時間のOWLに再び睡魔が容赦無く襲い掛かってくる。
せめて、突然怪人に扮した書道の偉い人が受賞者の子供を1人さらって「ぬっはっはっはっは」などと不敵な笑みを浮かべた所で突如現れた船体者のヒーローによってボコボコにされる、と言ったアトラクションでも起きればOWLの目も輝きを取り戻すだろうが、生憎出てくるのはいたってノーマルな書道の偉い人ばかり。しかも、子供を連れ去るサービスをするどころか、格式ばった式典にありがちな有り難いけど退屈な長話を延々するのみ。OWLをより一層夢の世界に引き擦り込む結果となってしまった。
目蓋が完全に塞がりかけたその時、式典に変化が起きた。
お偉い人の話が終わり、受賞者の表彰状授与へと移行したのである。
よかった。これで少しは気が紛れ、睡魔の足音が遠のくと思った。
だが、それは早計と言うものであった。
何しろ、受賞者の数が尋常ではなかったのである。
なんとかの部、かんとかの部、などと言って、お子様たちが後から後からポコポコ出てくる。
更にそのなんとかの部の中にも金賞、銀賞、銅賞、特選などと様々な賞があり、わざわざ別々に表彰する。ええい、賞が多いぞ。もっと少なくしろ。特選なんて生わさびにだけあればいいんだ。
それにしても、小中学生受賞者だけで異様な数だ。壇上に入りきれていない。少子化は本当に進んでいるのか疑問に思うくらいである。
もはや開いた口が塞がらない状況のOWLを尻目に、Noriは最前列で他のおじ様に混じって大量発生している受賞者たちに臆する事無くビデオ撮影をしていやがる。若干22歳にして運動会でカメラを抱えるおじ様の貫禄が出ている。
ますますNoriの実年齢が疑わしくなってきた。
Sat,17 2002 Nov. 11:46 長野県松本市 某多目的ホール
開会から約1時間。授与式はまだ終わらない。本当に少子化は進んでいるのか。まだ少子化が足りないのではないか。
いや、実の所、ある程度適当に書いていれば、小学生くらいならお慰み的感情で賞を貰えるのではないだろうか。現にOWLが習字をしていた時は、やる気ゼロで書きまくってたのに聞いたことも無いような賞と共にもういらねえよと言うくらいトロフィーを貰っていたし。
またOWLの妄想ベクトルが罰当たりな方に向かっている。これはまずい。油断していると大暴れして授賞式を台無しにし、OWLの三面記事デビューが確定してしまうではないか。
だが、そんな精神異常をきたす前に、OWLの体の方が軽く不調を訴えていた。長時間同じ格好で座っていたせいか、体が痛くなってきたのだ。
こんな何処にでもあるパイプ椅子で、しかも書道の授賞式なんかでエコノミークラス症候群など起こしてぶっ倒れようものなら、OWLの家系の恥がまた1つ出来上がってしまう。
流石にこんな異国の地での恥の大盤振る舞いは避けたい。そこで、息抜きも兼ねて、OWLは外の空気を吸いに行った。
Sat,17 2002 Nov. 11:51 長野県松本市 某多目的ホール周辺
受賞者の名前が読み上げられる中、ホールを出ていった訳であるが、出てみて驚愕。思いの外、人が沢山いたのである。しかも親子連れ多数。なんだこれは。
その理由はすぐに分かった。要するに、我が子が賞を受けると言う晴れ姿を見て満足した親が、もはやここには用が無いと言わんばかりにサッサと帰り支度をしているのである。
いや、その気持ちは分からんでも無い。OWLだったら間違い無く帰る。何が楽しゅうて赤の他人のお子様の受賞など見なければいけないのだ。至極御尤もである。
だが待て。こんなに人が多くては、OWLの不法侵入ツアーin松本の名も無きホールが大っぴらに出来ないではないか。人知れずガードマンに職務質問されてしどろもどろになりたいのに、こんな人前でやってしまっては社会的に抹殺されたも同然では無いか。
という事で、ロクに徘徊する事も出来ず、OWLの気分転換は本当にただの気分転換に終わるという非常に不本意な結果となった。
Sat,17 2002 Nov. 12:35 長野県松本市 某多目的ホール
結局、大した徘徊も出来ぬまま、すごすごとホールに戻ってきたOWL。授賞式は当然の様に続いている。結局、授賞式はOWLの徘徊失敗からおよそ30分も続いた。
まだ1日は半分近く残っているのに、OWLは精も根も尻子玉もスッカリ抜かれたような面持ちで授賞式を終える結果となった。
Noriは授賞式の間ずっとビデオを回し続け、Noriの母上と弟さんは実際に受賞され、Noriの父上はずっと家族のサポート役に徹していた。何だか恐るべき書道一家である。
受賞後、NoriがOWLを見つけて駆け寄ってくる。
Nori「ごくろうさん。ごめんね、家族の用事に勝手に付き合わせたりして。松本観光はするから。」
OWL「いやいや、まあ、タダ飯食いの身分っすからね。」
適当に一言二言交わしてホールを出ると、何やらNoriに駆け寄ってくる謎の親子連れの姿があった。
謎の母「どうも、Nori先生。いつもお世話になっております。」
ぬ、Noriが先生とな。
聞きなれない名称に些か戸惑うOWLを尻目に、Noriはさも当然の如く、この謎の親子との世間話を展開してゆく。
謎の母「先生のお陰で娘の成績がまたよくなったんですよ。これからも宜しくお願いいたしますね。」
Nori「いえいえ、こちらこそ宜しくお願いします。」
謎の母「娘も先生が来るのをとても楽しみにしてるんですよ。ホラ、先生に挨拶は?」
謎の母に挨拶をするように促される謎の娘。小学校高学年、もしくは中学生くらいだろうか。大人しそうな顔つきをしている女の子だった。そして、その顔つきに性格を合わせているかのように、母親の後ろでもじもじしながらNoriの様子を窺う謎の娘。
何と言うか、お昼のドラマなんかでよく出てきそうな場面を見ているようだ。
典型的な世間話を繰り広げるNori。学校でちょっとアレな人として学科でも軽い警戒心を抱かれているNoriが、ここでは謎の親子連れから絶大なる信頼を得ているようだ。
会話を終え、謎の親子と別れた後、Noriからさっきの親子の娘は同じ書道の教室に属しており、またNoriが家庭教師で勉強を教えている子なのだそうだ。
そうなのである。Noriは地元松本市で家庭教師をしているのである。
しかも業者を介する事無く、自分1人でスケジュール調整から教材準備までこなし、多い時には小中学生を中心に20人近くを受け持っていた事もあるという、凄まじい輩なのである。
授業料も通常の家庭教師よりもかなり割安にしつつ、サービスは業者の家庭教師の上を目指すNoriは既にベンチャー企業を立ち上げていると言っても過言ではない。
20人を抱える家庭教師の他に、地元では書道の先生、少年野球の監督、更に自分の家の家事手伝い、冬には雪かきまでこなすNori。三重県に移り住み、三重大学の大学生として暮らしている筈なのに、一体何処をどうすればこんな地元密着型になれるのだろうか。
Noriが地元に帰る度にやつれてゆく理由がよく分かったような気がする。それにしてもすげえなNori。
Sat,17 2002 Nov. 12:47 長野県松本市 松本美術館
松本美術館にて書道展が行われていると言うので見に行く事に。受賞作品も飾られているらしい。
名も無きホールから歩いて数分の所にありました。漆黒に染め上げられ、何処と無く重々しい雰囲気を漂わせている外観。
しかし、入り口にてそんな雰囲気を一蹴する軽薄極まりないオブジェに出迎えられる。
一体どんな気分の時にこんなものを創ろうと思うのだろう。ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお何じゃあこりゃあ。
こういう地方の美術館に行くと、しばしば何処の馬の骨とも知らぬ芸術家が勢いに任せて創った不可解な美術品なんかが見られるとは聞いていたが、これはもう不可解を突き抜けて感動すら覚える。そのインパクトに堪らず写真を撮ってしまったOWL。勿論、現像された後、大いに後悔する事となる。
Nori「これは…何なんだろうね。」
OWL「Noriがチューリップになったらきっとあんな感じになるんじゃない?」
Nori「ええ?あれ、オレ?」
どんなオブジェが出て来ようと、罰当たりだけはキッチリこなすOWLである。
Sat,17 2002 Nov. 12:50 長野県松本市 松本美術館
Noriから頂いた美術館の入場券を受付のお姉様に渡し、いざ書道展覧会へ。
先ず、OWLとNoriを出迎えたのは、小学生の作品である。
3学期が始まったばかりの小学校の教室の後ろの壁が四方にある部屋。そんな印象であった。如何にも小学生、と言った文字から、生意気にクソ丁寧に書かれた文字まで、それぞれの作品が、限られた紙面の中で発展途上の個性を忌憚無く発揮していた。
よく見ると、作品の隅の方に、金色の紙や銀色の紙、銅色の紙が張られているものがある。どうやら、これが受賞作品らしい。Noriの弟さんも見事に受賞されていた。なるほど、確かに上手く整っているものが多いように思われる。
だが、OWLが求めているのはそんなものではない。
書道の題字は個人で自由に決められる。
もう、何となく分かってきたのでは無いだろうか。そう、題字にいかれた単語を選び、書き殴る、狂気に満ち満ちた芸術の片鱗が窺えるような作品を求めているのだ。小学生ならば「うんこ」とか「ちんこ」とか書いてしまう困ったちゃんを求めているのである。
しかし、そんなOWLの期待空しく、どれも見事に理性のブレーキがかかった作品ばかり。強いて言うならば「わんぱく」が多少グッと来るものがあったが、それ以外はいたって平々凡々。うーむ、残念だ。
子供の自由な発想を上から無理矢理押さえつける大人の存在を背後に感じながら、次の部屋に向かった。
Sat,17 2002 Nov. 12:56 長野県松本市 松本美術館
続いて中学生の部。
たどたどしい平仮名や漢字が踊り狂う小学生に比べ、流石に中学生の題字は漢字ばかり。しかも、そのほとんどが四字熟語であった。また、楷書が現れ始めるのも中学生の特徴である。
ここでもOWLのアンテナは仄かに漂わせる狂気を察知しようと一生懸命であった。
だが、やっぱりここでも狂気らしい狂気が見付からない。辺りを見回しても「一所懸命」とか「切磋琢磨」とか、大人が喜びそうな単語ばかりである。
せめて同じ四字熟語でも「奇々怪々」とか「財政赤字」とか「馬鹿野郎」とか、書道界に無駄に旋風を巻き起こす輩はいないのであろうか。あ、「四字熟語」という四字熟語を題字に用いるもの斬新で良いかもしれない。
Nori「何、そんな微妙な顔つきしてんだよ、OWL。」
OWL「いやさ、もっとふざけた単語選んで書いている強物(つわもの)はいねえんかな、と思って。」
Nori「あー、それね。そういうのって、添削っていうか、検閲受けるんだよね。書道に相応しく無いって事で。」
OWL「ほう?」
Nori「オレも昔、やってみたんだよね。「一家離散」とか「動脈硬化」とか。でも、やっぱりダメだって言われちゃってさ。どんなに上手に書いても出展できないようになってるんだよ。」
何だ、やっぱりそうか。書道の面白味が少し削がれたような気がする。
それにしても、既に試みた事があるとは、流石はNoriである。そうこなくっちゃ世の中楽しくない。
Sat,17 2002 Nov. 13:03 長野県松本市 松本美術館
中学生の部の次は当然高校の部である。作品数が一気に少なくなる。
ここまで来ると、素人目にも物凄く丁寧に書かれていると分かるものから、明らかにコイツ人生舐めくさってるだろと勘繰りたくなるようなものまで、実に様々な書体が見られる。書道はどうやら高校に入ると一気に芸術の色が強まってくるようだ。
題字も一気に多様化し、男らしく「努力」と書ききる者もあれば、OWLにはサッパリ意味が分からない漢文をひたすらに書きまくっている者もいる。まあ、どの道OWLが全ての作品に対して言える事は「理解不能」の4文字である。流石に小学校の6年間、しかも不真面目に習字をやってきたOWLには既に太刀打ちできない域であると認めざるを得ない。
作品数が少なかった事もあり、高校の部は風の様に通り過ぎた。
Sat,17 2002 Nov. 13:06 長野県松本市 松本美術館
最後に一般の部。
一般になると、入選の難易度がグッと上がる事もあり、どの作品にも素人臭さは微塵も感じられなくなっている。もはや、何処に出しても恥ずかしく無い域にまで達していると思われる。
表現方法も実に様々。何処と無く脱力感を感じ出せる書体は脱力感を限界まで出し切り、お寺の掛け軸なんかに書かれてありそうなボケ老人がとち狂って書き殴ったような一見グチャグチャした文字もあり、中にはお経かと思わせるようなくらい沢山の漢字をただひたすらに書きまくった作品もある。何と、ハンコまである。既に職人じゃねえか。
Noriの母上や妹さんの作品も賞を取ったこともあって展示されている。うーむ、何だかよく分からないがとにかく凄い。
更に、今回の審査員の方、即ち書道の偉い人の作品がガラスケースの中に飾られていた。
隣のNoriは感嘆しっぱなしである。感動の余り、体が震えてすらいる。
薬物中毒者の禁断症状みたいだ。だが、やっぱりOWLにはその凄さがなかなか伝わってこない。Noriの母上や妹さんの作品と書道の偉い人の作品の区別が付かない。そもそも、先に「何処に出しても恥ずかしく無い」と書いたが、一体どの辺が恥ずかしくてどの辺が恥ずかしく無いのかすら分からない。書いてある文章の内容も分からない。謎が謎を呼ぶ空間にOWLは完全に迷い込んでいた。
昔、芸大を目指していた友人に、立派な芸術作品は例えピカソの様に一般人には理解し難い作品でも色や構図などが完全に計算し尽くされているんだ、などと興奮気味に語られたが、その友人の言っている事がOWLの理解の範囲を完璧に逸脱していた時の事を思い出した。
Sat,17 2002 Nov. 13:30 長野県松本市 松本美術館
作品を全て見終わったOWLとNori。しかし、得るものには大分差があったようだ。まあ、いいや、何も得れなくても。
Noriがトイレに行きたいとのたまうので、その間OWLは美術館内に設置されている売店で暇を潰す事に。意外に賑わっていてビックリする。
画集、筆、絵の具。美術館らしい品物が並ぶ。
しかし、そんな数ある品物の中でOWLが手にとって見たものは地獄絵図の画集。その名の通り様々な年代の地獄絵図が描かれている、正に地獄の歴史書そのものである。
目を爛々と輝かせながら地獄絵図を手に取っているOWLを見つめるNoriの恐怖に満ち満ちた眼差しをOWLは今後忘れる事は無いであろう。
NoriのOWLに対する疑心暗鬼をより一層深めた所で、OWLたちは松本美術館を後にした。
憲法第9条もOWLたちの旅路を見守ってます。
Sat,17 2002 Nov. 14:01 長野県松本市 松本総合体育館駐車場
Noriの本日の家族サービスは書道の展覧会のみで終了である。さて、これからは本格的にOWLの松本凌辱観光が始まるのである。実に楽しみだ。
とりあえず、信州大学松本キャンパスへ行く事にした。OWLは時折、他の大学に不法侵入したくなる癖があり(前例:愛知の某私立大不法侵入記)、今回もその欲望を満たす運びとなった。
松本美術館を後にし、車で数十分。
流石に大学には車を止めれないからと、近くの松本総合体育館の駐車場に車を止める事に。しかし、駐車場が近付くにつれ、Noriに言動から落ち着きが無くなっていく。
OWL「お、どうした。またいらんことするんちゃうやろな。」
Nori「まさか。この真面目一徹のこのオレが世間に顔向けできない様な事をする訳ないじゃん。」
OWL「不真面目一直線が何言ってやがる。何だ。何かやらかそうとしとるだろ。」
Nori「何言ってんの。ただ、ここの駐車場は本当は体育館の利用者しか止めちゃいけないから、たまに入り口にいる見張りの人がいないかどうかチェックしてるだけだよ。」
案の定だ。ちょっと油断すると、部長が新米OLの尻をサワサワと触るが如く法に触れやがるNori。
ここで見張りの人に見付かって一悶着(ひともんちゃく)起これば面白かったのだが、幸か不幸か見張りの人はおらず、難なく駐車場を無許可で利用できる事と相成った。
Sat,17 2002 Nov. 14:12 長野県松本市 美須々ヶ丘高校・旭町中学校付近
総合体育館から信州大学に向かう途中、中学校と高校に挟まれているというありそうでなかなかない珍しい道を歩いた。
Nori「こっちが旭町中学校であっちが美須々ヶ丘高校ね。ちなみに美須々ヶ丘高校は信州大学がこんなに近いのに信州大学に入れるのは毎年トップの1人がいいとこ。信州大学に最も近くて遠い高校だよ。」
Noriの無駄マメ知識も冴える。
この日は休日にも関わらず、校内には生徒の姿が見られた。恐らくクラブ活動だろう。金管楽器を抱えてポヘーとか音を鳴らしている人。何語を話してるんだか判別できない声を上げながら野球をしている人。半ばだるそうにテニスをしている人。実に様々である。
特にNoriは金管楽器でポヘーと音を鳴らしている人に興味を抱いたらしく、その金管楽器隊を見ながら呟いた。
Nori「ああ、オレも高校の頃はあんなだったなあ。」
Noriは高校の頃、吹奏楽部だった。だが、楽器を演奏すると言うよりは、演奏の合間にここで書き出すのも憚られるほどアホな格好で寒い寸劇をするという、専らキチガイ染みたパフォーマンスを専門にやっていたらしく、その活動の凄さは腐れ外道という称号を頂いた事からも窺い知る事が出来る。
感慨深げに呟くNoriからは、吹奏楽部の思い出がそれなりに面白いものだったと考えられる。例えそれが傍から見たらキチガイ以外の何物でもなかったとしても。
昔からクラブ活動にはほとんど参加せず、今でもサークル未経験のOWLには分からない感覚であろう。
Sat,17 2002 Nov. 14:19 長野県松本市 信州大学松本キャンパス
さて、いよいよ信州大学松本キャンパスである。地元にある静岡大学浜松キャンパスを差し置いて、愛知の某私立大学に引き続き2度目の不法侵入(別に不法じゃないけど敢えてこう書く)である。思わず胸が高鳴る。
先ほどの中学校・高校とは異なり、大学内はロクに人どころかロクな生命体すらおらず、非常に閑散としていた。
むき出しのコンクリートの壁には頭の悪そうな落書きが並び、大地にはゴミなのか必要なものなのかの判別すら出来ないオブジェと化した物が散乱していた。
国立大学というと、さぞかし立派なんだろうなあという世間のイメージがある。OWLも厭と言うほど味わった。だが、実際の所はこんな感じなのだろうと思った。
くだらない感傷に浸っていようと腹は減る。もう、昼飯時など遥か昔の事となっている。何処かにいい食い物屋は無いものか。
OWL「なあ、Nori。腹減らね?」
Nori「そうだね、信州大にも生協の食堂があるだろうから探してみようよ。」
OWL「その生協食堂ってここか?」
まるで泥棒に入ってくれと言わんばかりに半開きの信州大生協。Nori「ふーむ、準備中って書いてあるね。微妙に中に入れそうだけど、中は真っ暗だし、やってないみたいだね。」
片田舎の公園並みの人気の無さで嫌な予感はしていたのだが案の定、生協は休みであった。三重大は休みでも営業している時があるというのに、生協にも地方によって格差があるということなのだろうか。
OWL「ええーマジかよ。オレもう腹減ったー。」
Nori「まあまあ、それじゃあ適当にその辺ぐるっと一周してから飯でも食いに行こうよ。」
という事で、OWL信州大学不法侵入は空腹との戦いとなった。
頭の悪さ爆発の落書きは道路標識にも及ぶ(写真右部分に注目)。数分後、OWLとNoriは経済学部校舎の前にいた。
校舎の入り口には何やら看板が立てかけてある。どれどれ………信州大学経済学部推薦入試試験会場だと?
道理で閑散としている筈だ。入試試験となれば基本的に大学生は大学に入っていはいけない事になっている。じゃあそこにいるOWLとNoriはどうなんだと言う至極真っ当なツッコミが予想されるが、それは全て無視させていただく方向で。
さて経済学部の次は…と思ったその時、Noriの目がまたもや怪しく光り出した。
Nori「お、ここから入れるな。」
OWL「マジで?…っておいこら。何、扉開けようとしてんだ。」
Nori「いいじゃん、いいじゃん。オレらも受験生に成りすませば。」
OWL「あ、なるほど。」
土台、無理がありまくるNoriの説得に見事に騙されたOWL、フラフラと経済学部への扉に手を掛けた。
戸を開けると、待合室のような所に出た。意外に綺麗な作りである。
人がいないことを幸いに、あっちこっち物色をし始めるOWLとNori。
しかし、肝心な所は鍵がかかっていて入れなくなっている。
大したものも無さそうだったので、これ以上危険を冒す必要も無いと思い、さっさと経済学部を後にした。
手ぶらで帰るのも何なんでトイレを撮影。
せっかく地味に危険を冒して試験会場へしょぼい不法侵入をしたのに、戦利品はトイレの写真1枚。これでは余りにも寂しすぎる。
くそう、結局信州大学の収穫はトイレの
盗撮写真だけか。そう失意のどん底に暮れながら相変わらず人気の無い構内をNoriと共にフラフラ彷徨っていたその時であった。
ん?
んんん?(赤丸内注目)構内の広場で、上空に向かって両手を広げ、何やら体をくねらしている爺様を発見。ありきたりな日常の繰り返しで退屈の海にドップリつかったOWLとNoriにこんな格好な獲物を見逃す訳が無かった。
OWL「おい、何だありゃ。UFO呼んでるんかな。」
Nori「ん?ああー、またそうやって変な人見つける。」
OWL「知らないよ、向こうが勝手に入ってきてUFO呼んでんだぜ。」
Nori「何の変哲も無いおじいさんだよ?UFOなんて呼ぶわけ無いよ。」
OWL「だってほら、今だって何か変な動きしてんじゃん。あ、それか悪魔を召喚しようとしてるんかな。おおーサーターン!とか言って。」
ご年配をおちょくるのはこれくらいにして、OWLとNoriの信州大学不法侵入は終わりを告げた。
いつ撮ったのか全く身に覚えが無い写真(恐らく美須々ヶ丘高校・旭町中学校付近)。
Sat,17 2002 Nov. 14:30 長野県松本市 松本総合体育館近辺
何だこれは。
ああー、なんだこれだったのか。…って何だこれは。少しでも怪しげなものを見つけると思いっ切りはしゃぎながらシャッターを切るOWLを、まるで頭の悪い故に可愛さを感じる息子を見つめる父親のような表情で嘲笑するNori。もはや何を言っても無駄だとでも言いたげだ。まあ、本当に何を言っても無駄なのだろうが。
OWL「なあ、Nori。これは何だ?」
Nori「何だろうなあ、この巨大チュッパチャップス。」
OWL「懐かしい事言うなあ。」
そんなことを言われるとチュッパチャップスを食べたくなるのは、人として当然の行為であろう。しかし、そこは無記憶大王OWL。そんな事など3歩進まずして見事に忘れ、OWLの記憶力がニワトリよりも遥かに劣る事が示唆される。
Sat,17 2002 Nov. 14:40 長野県松本市 松本総合体育館駐車場
総合体育館の駐車場に無断駐車されたNoriの車。
ここで監視のおじ様が帰ってきていたり、Noriの車がレッカー移動されていたりすれば面白かったのだが幸か不幸かそんな事は無く、相変わらず監視のおじ様はおらず、NoriとOWLは悠々と次の目的地に向かって進み始めた。
あの山は紅葉しているのか病気で枯れているのかNoriと言い争った記憶が。
Sat,17 2002 Nov. 15:02 長野県松本市 某進学高校付近
次の目的地は、かの有名な松本城。松本に来たからには、やはりここに寄らないと話にならない。盆地という事もあって、平らな道が続く松本市街。ここでもNoriによる負のオーラ満載のガイドが旅に汚らしい彩を添える。
Nori「はい、もうすぐOWLに馴染みの深い刑務所だよー。」
OWL「そりゃお前だろうが!」
こんな事でよく今まで付き合っているといつも思う。付き合っているは当然友人としてである。
平坦な道をしばらく走っていると、周囲が壁や金網で仕切られた、一際大きな建物が目に入る。あれが刑務所か。
しかし、その刑務所。刑務所というにはかなり洒落た造りである。何しろ、広いグラウンドも見えるではないか。
ううむ、刑務所は無骨な造りばかりだと思っていたのだが、こんな住み心地の良さそうな刑務所があるとは。OWLとしては幾ら住み良くても刑務所にぶち込まれるのは勘弁だが、ここだったら看守くらいはやってみても良いかもしれない。
OWL「おお、これが噂に聞きし刑務所か。」
Nori「え、刑務所って…。あそこはオレの母校だよ。」
OWL「へ?あれ、学校?」
Nori「高校だよ。そもそもあんな壁が低くて出入り自由な刑務所なんて無いよ。」
確かに、よくよく見ると、いや正確にはよくよく見ずとも壁は運動神経皆無のOWLでも楽に超えれそうに低い上、そもそも壁自体が途切れ途切れでかなり出入りが自由そうな門が点在している。これでは脱獄のし放題、犯罪者野放し大国松本が完成してしまう。
Nori「全く、ひでえよなあ。人の母校を刑務所呼ばわりするなんて。」
OWL「いや、だってさあ、刑務所があるって言ったじゃん。」
Nori「だからって高校と刑務所間違えるかよ。」
確かにごもっとも。
それにしてもこのNoriの母校、洒落た造りも然ることながら、驚愕すべきはこの高校、松本市でもトップクラスの進学校らしい。隣にいる阿部寛さん崩れのNoriがこんな洒落た超進学校の出身だとは。
OWL「ほおー、こんな所にNoriがねえ。で、Noriの高校生活はどうだったん?」
Nori「勿論、今と変わらず、真面目一徹、普通の高校生活でしたよ。毎日毎日愛用の手ぬぐいを頭に巻きつけて授業を受けてたら、いざ授業を休んだ時、先生に「あの手ぬぐいは何処に行った?休みか?」と言われてましたとも。」
真面目一徹と普通という所以外は全て事実だと判断できる。
高校を通り過ぎようとしたその時、Noriが突然ハンドルを切った。
Nori「ちょっと中に入ってみようか。」
Noriの顔を見ると、何時ぞやの侵入劇の時を髣髴とさせる怪しい輝きが再び眼に灯っていた。
まずい、ヤツは本気だ。コイツは不法侵入高校篇の幕開けか。
Noriの車が高校の敷地内に入ろうとしたその時、OWLとNoriの目の前に燦然(さんぜん)と現れたるは道を塞ぐようにして立っている立ち入り禁止の看板。
OWL「ありゃあ、立ち入り禁止だとよ。」
思いっ切り舌打ちをするNori。安堵と無念の溜息を漏らすOWL。
Nori「仕方が無い。松本城に行こうか。」
という訳で、侵入すら出来ずに長野県某進学高校不法侵入記は終焉を迎える。くそー、ここもアイシャルリターンだ。
Sat,17 2002 Nov. 15:14 長野県松本市 中央図書館
松本城の駐車場は観光客等の関係から止めるのが困難だと言う事で、近くの松本中央図書館に車を止める。今度は監視のおじ様の視線に怯える事無く、いたって普通に駐車をした。
駐車場近くにあった謎の建物。
例によって歴史的価値があるらしく説明を受けたのだが全て忘れる。ついでに中も覗いてみようということになり、図書館に足を運ぶ事と相成った。
中はやはり図書館だけあって物静か。たまに親のしつけがなってないOWL染みた子供の叫びまわる声や、幾らしつけをしようがこればかりはしょうがない赤ちゃんの泣き声がけたたましく鳴り響く以外は、実に落ち着いた空気が辺りを包んでいた。
そして、やはりこの時期の風物詩というべきか、あからさまに受験生と思しき兄ちゃん姉ちゃんが机を全て占拠し、一心不乱に勉学に励む者、緊張の糸が途切れたのか机に突っ伏して事切れているしばしの微睡(まどろ)みを楽しむ者、アホ受験生時代のOWLを髣髴とさせる程の緊張感の無さを醸し出している者、様々な人が机に向かっていた。
OWLもつい最近の事だったんだけどな。
微かな懐古の情を噛み締め、OWLとNoriは一路松本城へ向かった。
いつ取ったのか覚えてない写真その2(恐らく松本城に行く途中に撮影)。
しかも失敗作。でも載せる。
Sat,17 2002 Nov. 15:23 長野県松本市 松本城
さて、松本市最大級の観光地、松本城である。
流石全国に名を轟かせる松本城、この不況でも観光客はかなりのものである。
この辺から撮った方が良いよとNoriに促され、松本城を撮影する。流石地元人、よく知っていらっしゃる。
他の観光客の記念撮影現場も撮影してしまった(写真左下)。それにしても、Noriは松本城が歴史的には物凄く価値があるのに、堀を埋めたり近くにビルを建てたりして外観を損なわせた為に姫路城の様に世界遺産になれなかった、と言う事を、何度も話してくる。余程悔しかったのだろうか。
そんなNoriの話を聞きながら入り口らしき所でチケットを買い、いざ松本城へ。
と思ったのだが、やっぱりいらん事を考えてしまうOWL。
OWL「この入り口、警備が薄いなあ。チケット買わなくてもコッソリ忍び込めるんじゃね?」
Nori「またそうやって犯罪者染みた事を言う。そんな事できる訳無いじゃん。」
OWL「いや、あっちこっちに不法侵入しようとするNoriなら出来る筈だ。よし、やってみようNori。オレはNoriを捕まえて長野県警に表彰される役をするから。」
何はともあれ、OWL、今度は松本城デビューである。
Sat,17 2002 Nov. 15:29 長野県松本市 松本城内部
松本城内部は思いの他狭い。そりゃそうだ。そもそも観光用に作られら訳ではなく、当時は立派な要塞として機能していたのだ。
しかし、やっぱりこの狭さは何とかならないものか。特に階段は人ひとり通るのがやっとという位狭い上に勾配が急で上るのも下りるのも大変だ。更に微妙な高さに木の棒が突き出ていて、事ある毎に注意力皆無のOWLの頭にゴチゴチ当たるのだ腹立たしくて仕方が無い。
頭に瘤を作りつつも、何とか最上階に到着したOWLとNori。流石に最上階の景色は良く、松本城周辺の町並みが東西南北全て見ることが出来る。
その余りの景色の良さにOWLは東西南北全ての景色を写真に撮ってやろうと企んだ。
カシャッ。先ずは東側。
松本市東部。カシャッ。続いて南側。
松本市南部。
ひゃーははは見ろ人がゴミの様だ(天空の城ラピュタ参照)。さて、次は西側…、と思ったその刹那、ふと下の景色を見ると、城の屋根瓦の上でふてぶてしい面をしながらハトが羽を休めていた。
ぬ、これはシャッターチャーンス。
何故かそう思ってしまったOWL、何かに取り憑かれたかのようにハトをレンズに収めた。
松本城影の城主の撮影に成功。よし、では西側の景色でも写そうか。そう思い、カメラの残りフィルム数を見ると何と0になっているではないか。
ぐああ、何たる事か。OWLのせっかくの野望が、まさかハトによって阻まれる事になろうとは。侮り難しハト。
野望を阻止されたショックで失意のどん底に叩き落されたOWL。
OWLの松本城デビューは、無駄に苦い経験となった。
Sat,17 2002 Nov. 15:50 長野県松本市 松本城
カメラの為に松本城を出てすぐお土産屋さんに駆け込むOWLとNori。流石に松本城関係のものを始めとして、信州のお土産が所狭しと並べられている。
カメラついでにお土産を購入。何故か杏が使われたお土産が多く、OWLはNoriに薦められるがままに杏ジュースを購入。NoriはNoriで「これがいいんだよ」とか言いながら杏飴を買っていた。このまま飲んでしまっては味気ないと思い、松本城をバックに写真を撮る。
杏ジュース、ハトと戯れる御一行、松本城。
3つの次元がここに。無駄に壮大な雰囲気を醸し出した写真を撮った後、早速杏ジュースを飲んでみる。
うむ、美味い。何と言うか、ただ甘いだけでなく、いろんな味が混ざっているようなそんな感じである。全くを以って味を描写していない。
OWLがジュースを飲み干そうとしたその刹那、OWLの後ろでバラバラという音がする。
振り向くと、Noriが先ほど買った杏飴を袋ごと大地に落っことしていた。そこをすかさず激写するOWL。
哀れ野晒し杏飴。普段は緩慢なOWLもこの時ばかりは動きが早い。そんなOWLを見てNoriも
Nori「景色すら撮り損なうクセに人の恥はバッチリ撮るなあ。」
と感嘆しきりであった。感嘆していたのかそれ。
Noriが飴をばら撒いた所から数メートルの所に、妙な卒塔婆を発見。
OWL「なあNori。何だあの卒塔婆は?誰の墓だ?」
Nori「全く、よくそんな不吉な単語が瞬時に出るなあ。卒塔婆じゃないよ。文字をよく見てみてよ。」
OWL「ぬ?文字?えー…宇宙…ツツジ?」
卒塔婆イン松本城。宇宙ツツジ。在りそうで無い単語の組み合わせである。しかも認定26号である。何だこれは。
その疑問は卒塔婆の近くの看板を見て解消される事となる。要するに、何かの実験でわざわざスペースシャトルで宇宙まで運ばれたツツジの種の1つがここに植えられ、芽を出し、順調に成長しているらしい。なるほど、それで宇宙ツツジか。
きっと竹で作られた柵の中に宇宙ツツジとやらがいるのであろう。一体どの面下げてこの松本の大地に根を下ろしているのか。興味津々で覗き込んでみる。
宇宙ツツジです。何だか微妙に葉の色がおかしいのがOWLに不安感を抱かせる。この宇宙ツツジ、枯れかかってるのではないか。
あれか。ひょっとしたら宇宙に運ばれてしまったが故に地球に対する適応能力が無くなったのではないか。それとも、ただ単に松本の気候がツツジには合わないのか。何にしろ大丈夫か宇宙ツツジ。
少なくとも全世界に25本存在しているであろう他の宇宙ツツジの安否を非常に気になってしょうがない。杞憂って言うな。
Sat,17 2002 Nov. 16:02 長野県松本市 松本城周辺某蕎麦屋
松本城の間違った所を集中的に満喫したOWLとNoriは、この時刻になってようやく昼飯を食べていない事に気が付いた。
曲がりなりにも(曲がり過ぎ)信州を満喫して来たのだから、いっその事ご飯も信州縁のものにしたい。という事で、松本城の隣にあった信州蕎麦屋で遅い昼食となった。
どうせならと一番高い蕎麦を注文するOWL。後で財布を見て大いに後悔するとも知らずに。
注文を済ませ、ホッと一息つくOWLとNori。こうなるとやる事は1つ。店内の怪しいもの調べ以外に有り得ない。
早速OWL、脇にあった怪しい置物どもにベタベタ手垢を付けまくりNoriに嘲笑される。
後ろを振り向けば、壁一面に張り出されている色紙の数々。どうやら、よほど有名な信州蕎麦屋らしい。
だが、よくよく見てみると、マイナーな著名人なのかOWLの知識が乏しいのか、知っている人が誰一人として見当たらない。
一生懸命探してようやく1枚見つけたのだが、そのサインは見栄晴さんという何とも微妙な有名人(←失礼)。
そういえば最近見ないなあ見栄春さん、と物思いに耽っていると、Noriが自分の指を見せながらこう言ってきた。
Nori「見てよOWL。オレ、凄いササクレが出来ちゃった。」
見ると確かに1センチは在ろうかという脅威の長さを誇るササクレがNoriの親指に出来ているではないか。
普段は優柔不断なクセしてこういう時の決断は早い。OWL、すかさず激写。
ササクレ(赤丸)と店のおば様(水色丸)。
フラッシュ付きカメラでなかったのが悔やまれる。アホな事をしているうちに蕎麦が来た。おお、これは
業火だ豪華だ。
蕎麦、天ぷら、馬刺し(うろ覚え)、漬物。
これだけで確か1200円ほど。
うひゃあ久々に1食で1000円以上払ったよ。
堪らず別アングルからも撮影。
向こうのNoriが注文した山菜蕎麦とおこわも美味そう。
美味そうに写っていないのがタマに傷。余りの豪華さに驚きを隠せない。食べても良いのかとすら思ってしまう貧乏性OWL。だが、そんな貧乏性も空腹には勝てるはずも無くものの数十分で全てOWLの腹の中に納まってしまった。この蕎麦は実に美味かった。また食べたい。
Sat,17 2002 Nov. 16:39 長野県松本市 松本城周辺
蕎麦を堪能したOWLとNoriは、松本城を後にした訳であるが、松本城でハトに辛酸を舐めさせられてから激写癖が治らないOWL。もう、中央図書館に止めてあるNoriの車までに目に付くものを激写激写。激写の連続である。
この意味と面白味の無さと言ったら自分で言うのもなんだが一種の才能を感じる錯覚をしてしまってならない。
OWLはどうも木を撮る癖がある様だ。
木を撮るついでにおじ様も激写。
木を撮ると必ず何処で撮ったかを忘れるのが困りもの。もはや初めて使い捨てカメラを買った少年の様に意味の無い写真を撮りまくるOWLにNoriも嘲笑する気力が失せたのか、OWLに被写体を提供する始末。
Nori「ここ見てよ。これ小学校なんだよ。こんな豪華で小学校なんて有り得る?」
OWL「ぬおお何だこの洒落た小学校は。何処の政治家の陰謀だ。」
地方の年金会館並の微妙な豪華さ。OWL「よし、こうなったら忍び込んでビデオデッキの2、3台パクって来ようぜ。」
Nori「何だよその的を絞り過ぎた泥棒は。っていうかあれだろ?またオレを身代わりにして逃げるって算段だろ?」
OWL「当たり前じゃんか。ここでこそNoriの犯罪者面が本領を発揮するってもんだよ。」
Nori「嫌だよ、そんなの。」
被写体を提供されておきながら相手を大いに貶(けな)すOWL。友人が少ない訳だ。
OWLの激写癖は留まる所を知らない。その魔の手は何の変哲も無い干し柿にまで及ぶ。
ちなみにOWL、柿も蛎も大嫌いです。更に僅かながら変哲が見られる地面の標識にも被害は及ぶ。
長野県の山中にて双頭パンダを発見するも捕獲に失敗。
尻尾の位置が微妙にやらしい。散々訳の分からない写真ばかり撮り続けて意味不明な満足感に浸ったOWLは、もはや呆れを通り越していつも通りの振る舞いしか出来ない様子のNoriと共に車に乗り込み、中央図書館を後にした。
満足感に浸っておきながらまだ撮るOWL。
Sat,17 2002 Nov. 16:54 長野県松本市
松本城も見終わり、家路を急ぐOWLとNori。
その間にもOWLはフィルム処理などと称して無駄に写真を撮りまくる。
紅葉が綺麗ですなあNoriさんや。OWLが写真を撮る合間にもNoriは、
Nori「あー、この家の長男は現役で東大に入ったんだよー。」
などと、ご近所のおば様方の井戸端会議よろしく無駄を極めつくしたマメ知識を披露していた。
その現役東大君の家から数分走ったところで信号に引っかかり停車を余儀なくされた時の事。
OWLがふと外を見ると、何やら屋根に上って木を
八つ裂き切っているおじ様を発見。OWL「ねえ、あれ撮っていい?」
Nori「そこで何でオレに許可を求めるんだよ。というか、おじさんを「あれ」って。既に物扱いかよ。That呼ばわりかよ。」
OWL「いいの?いかんの?いかんって言わないなら撮るよ。あ、もう撮ってもうた。」
またもや名も無きおじ様の肖像権を激しく侵害しながら帰路を急ぐ。
松本市内にておじ様を激写(写真赤丸)。
Sat,17 2002 Nov. 17:01 長野県松本市
恐らく帰路についているであろうNoriの車のカーステレオから、耳慣れない音楽が流れている。
一昔前の女性アイドルの曲の様に思えるのだが、その女性の声が誰だかサッパリ分からない。曲も当然分からない。遂に耐えられなくなったOWL、Noriに尋問してみる。
OWL「なあ、これ誰の曲だ?」
Nori「ええー、知らないのかよー。」
何。ひょっとしてかなり有名な人だったのか。最近、歌番組を見る時間が少なくなったOWL。ひょっとしたらOWLの知らない人気歌手なのかもしれない。ちきしょーテレビを持っていない為に最近の芸能界にはトコトン疎いNoriに「この歌手知らないの?」と言われるとは何たる屈辱。
ぬ、ちょっと待て。そうだ、Noriは麻薬の知識はかなりのものがあるが芸能関係は、特に最近に関しては知識が乏しい筈。その実力は「オレ最新曲手に入れたぜ」とか言ってサーフィスという微妙な辺りのCDを見せる辺りから実証済みだ。
恐れる事は無い。どうせ超マイナーなB級アイドルが出てくるに違いない。
OWL「知らんわ、んなもん。」
Nori「知らないの?そろそろサビの部分だから分かるかも。」
OWL「聞いたことねえな。」
Nori「マジで。****(名前忘れた。聞いたこと無かったのだけは覚えている。)って言うんだけどな。」
OWL「誰だそりゃ。何処のB級アイドルだ。」
Nori「B級だなんて失礼な。彼女は昔○○○○(アニメのタイトルのようだ)の主題歌を歌っててさー……。」
何やらOWLの知らない世界について語り出したので全て黙殺して景色を楽しむことにした。
Sat,17 2002 Nov. 17:32 長野県松本市 Nori邸
くだらない騒動ばかり巻き起こしつつも、どうにかNori邸に帰還する事が出来た。
何処がどうなってか経緯はスッカリ忘れてしまったのだが、期間後にすぐ風呂に入る事となった。風呂と言えば今朝の風呂との闘いが記憶に新しい。
ドアから始まり、シャワーや温度調節、難なくクリア。ふはははは、どうだ、人類は進化しているのだ。幾ら大バカ将軍OWLと言えどもバカにするでないぞ風呂場の物ども。
たかだか物にかなりの優越感を感じながら風呂に入るOWL。確実に人間失格に向かって進化していると思われる。
Sat,17 2002 Nov. 19:01 長野県松本市 Nori邸
風呂から上がり、部屋で抜け殻状態になりつつくつろいでいると、なかなかどうして豪華絢爛な食事が次々と運ばれてきた。どうやらこんな動く生ゴミOWLでも精一杯おもてなしをしてくれるようだ。そのもてなしぶりは罰当たりOWLがこの中に毒でも入っているんじゃないかと疑ってしまうほどであった。
Noriが風呂から上がり、料理が揃った所で宴が始まった。Noriの父上からお酌をしてもらい、酌慣れしていないOWLはかなり申し訳なくなった。
さて、この宴の内容なのだが、残念ながらこれがまたほとんど覚えていない。辛うじて覚えているのは松本サリン事件の後にNoriがオウムに間違えられて一騒動巻き起こした話やNoriが研究の為にと実家から持ってきた天然のナメコを図鑑で調べたら、図鑑の「コックリとしたうまみが」というフレーズに食欲をそそられてしまい、研究に用いる前に全て食べてしまったという話くらいである。
この他にもNoriが面白おかしい話を展開したらしいのだが、後はもうOWLが物凄くケタケタ笑っていた事くらいしか覚えていない。
後にNoriから「家族に「あんなに笑う子初めて見た」って言ってたよ」と言われたので、かなり異様に爆笑していたと思われる。酒の力は恐ろしい。
Sun,18 2002 Nov. 0:04 長野県松本市 Nori邸
OWLが酔っ払って大爆笑している間に日付が変わってしまった。宴が終わったのも丁度その頃である。
だが、曲りなりともOWLとNoriは大学生のかなり端くれ、この程度の宴で完全燃焼してしまうほど柔(やわ)では無い。更なる夜更かしなどお手の物である。
一先ず、Noriの部屋でダラダラするOWLとNori。特にする事も無いので、2人してパソコンを弄くり回していた。
コタツで向かい合ってパソコンを弄くる。一見するとそれは全く同じ事をしているように思える。
しかし、パソコンを使ってこの駄文のメモをヘロヘロと打っている惰性貴族OWLに対し、Noriはバイト先の塾の生徒に渡すプリントを製作している。
この格差。悲しさを通り越してもうどうでもいいやという感すら覚える。
Sun,18 2002 Nov. 2:26 長野県松本市 Nori邸
話の流れでゲームをする事になった。キングオブファイターズという2人で互いにボコボコ殴りあうゲームである。
自慢じゃないが、どうも反射神経を必要とするゲームが大いに苦手なOWL。その為、この様な闘いで勝利を収めるためには卑怯な手段が欠かせない。
Nori「このキャラクターがさあ、どうにも弱くて使いにくいんだよね。」
とか言いながらそのキャラクターを選び、OWLのキャラクターをタコ殴りにするNori。日ごろの恨みがここに出ているのか、OWL、凄まじい殴られ様。
だが、OWLとてこの程度では終わらぬ。持ち前の卑怯な手段でNoriを翻弄すると同時に怒りのボルテージをガンガン上げる。
それでも喧嘩にならなかったのは、珍プレーが大量に繰り出されているからであろう。何故だかよく分からないのだが、妙な現象ばかり起こって怒る気が失せ、笑いが起こるのである。
闘いを通して感じ取る相手の強さ、そして友情。その架け橋となったのは他ならぬ珍プレーであったということだ。
何を言っているのか自分でも分からなくなってきた。
Sun,18 2002 Nov. 4:14 長野県松本市 Nori邸
結局、その格闘ゲームを2時間以上もやりこんでしまったOWLとNori。気が付けば明け方近くである。
実の所、OWLはまたもやスクラム組んだ睡魔にやられそうになっていた。何しろ、本来は睡眠時間が9時間必要な体質なのにも関わらず、昨晩は無駄に疲れたクセして4時間しか寝ていなかったのだ。体力は限界に近付いている。
しかし、隣でOWLと共にゲームに興じているNoriという男、全く疲れている素振りを見せない。いや、むしろテンションが上がっている様に見える。昨晩も思ったのだが(往路篇参照)、こやつ一体何者だ。
そんなNoriを見てOWLは、NoriがNoriの父上に「タフだなあ。」と感嘆されていたのを思い出した。確かにタフだ。睡眠時間はOWLと同等の筈なのに(正確にはNoriの方が運転している分だけ疲れている筈なのに)、このテンションの高さ。もはや妖怪の域である。
いくら性悪大学生OWLと言えども妖怪には敵わない。そう悟ったOWLは、あっけなく敗北宣言をし、Noriとの2時間にも及ぶ激闘に終止符を打った。
Sun,18 2002 Nov. 4:25 長野県松本市 Nori邸
もはや精も根も尽き果て、大した事をしていないのに満身創痍になってしまったOWL。だが、そんなOWLに神の声が届く。
何と、明日は好きなだけ寝ていてもいいというのだ。やったーその言葉を待っていた。
こうなったら寝れるだけ寝てやろうと意気込み布団に入ると、瞬く間に夢の世界へと旅立っていった。